氷帝カンタータ





番外編 秘密のランデブー -Jurassic Park-





「う…わぁ、ここはさすがに長蛇の列だね。」

「50分待ちみたいですね。どうしますか?他から行きます?」

「…いや、並ぼう。どうせ後から来ても一緒だと思う。」



ようやく笑いのおさまったぴよちゃんさまを連れて、次に私達が目指したのは
USJでも屈指の人気を誇るジュラシック・パーク・ザ・ライド。
まだ開園してからあまり時間は経ってないはずなのに、いつの間にこんなに人が並んでいたんだろう。



「…あ、そうだ。水に濡れるアトラクションらしいですから、合羽買って行きますか。」

「…いや、いらないっしょ。」

「何言ってるんですか、今は夏じゃないんですよ。一度濡れたら中々乾きませんから。」


そう言って、問答無用でアトラクション入口に設置された合羽売り場へと並ぶぴよちゃんさま…
を、無理矢理引っ張ってなんとか待機列へ引きずり込む。


「ちょ…何ですか。」

「いらないよ、合羽!濡れようよ!」

「…なら、先輩だけ濡れて下さい。」

「それは意味ない!私は濡れたぴよちゃんさまが見たいの!


ガツッ


「いたっ!…な…殴ったね!先輩を殴ったね!」

「あ…すいません、つい手が出てしまいました。」


自分が殴ったくせに、驚いた表情をしているぴよちゃんさま。
つい本能で殴ってしまったんですね、わかります。
私も忍足や忍足や、主に忍足に対してそういう行動に出てしまうことが多々ありますから。わかりますけど、哀しいです。


「……この一発の代償として、合羽はなしということで。行くよ!」

「…はぁ…。」


ぴよちゃんさまの手を掴み、迷路のような待機列をずんずん進んでいく。
大きなため息が聞こえたけど、聞こえないフリ。
やっと列の最後尾に辿り着いたけど、まだまだ先は長そうだ。

フと、隣のぴよちゃんさまを見てみると怪訝そうな顔で私を見ている。
何かと思って、曖昧に微笑むとぴよちゃんさまの眉間の皺が更に深くなった。


「…ん?どうしたの、ぴよちゃんさま?」

「…手。」

「あ、ごめん。」

「いえ…別に。」


必死すぎて気づいてなかったけど、私今さりげなくぴよちゃんさまと手を繋いでた。繋いでたよね…!
く…っそぉ、咄嗟に離しちゃったけどあの流れで恋人繋ぎ…いわゆる指を絡ませて繋ぐ方法まで持っていけばよかった…!
…もう、今更手をつなぐのもおかしいしな…なんて惜しいことをしてしまったんだ、私…!

いや、考えろ…考えるのよ…、なんとか上手く…さりげなく手をつなげる方法はないだろうか…






あ。そうだ。



「…ねぇ、ぴよちゃんさま手相見てあげよっか。手かして?」

「手相?……先輩、興味あるんですか?」

「う、うん。ちょっと前に流行ったじゃん?」

「……ふーん。」


興味なさげに、私に右手を差し出すぴよちゃんさま。
…っふ、ちょろいもんだわ…!これで手を触り放題ということじゃないですか、うふふ!
この邪な考えを読まれないように、真剣な顔でぴよちゃんさまの手を覗きこんだ。
……うん、何もわかんない。手相なんて生命線ぐらいしか知らないから、私。
でもここで知らないなんてことになったら、ぴよちゃんさまの手に触れていられなくなる…それだけは避けなければ…!
そして、あわよくばこのままずっと2人で手を取り合いたい…!


「…何か面白い線はありますか?」

「う…うーん、どうかなぁ…もうちょっとよく見ないとわかんないかも…。」

「……そうですか。」

「…あ、あー!この線はあれかなぁ…違うかなぁ、いや、でも……。」

「……っふ。先輩。」

「ん?何?」

「本当は手相なんて見れないんでしょう。」

「み、見れるよ。なんで疑うのさ。」

「ほとんどの場合、左手で手相を見ることの方が多いですから。」

「………………。」


恥ずかしすぎる。ハメやがった、この小悪魔ぴよちゃんさま…!
思わぬ罠に急激に顔が赤くなっていくのがわかる。
わ…私が手を触りたいだけの変態に見えてやしないだろうか…いや、実際そうなんだけど…!


「……先輩の手をかしてください。俺が見てあげます。」

「え、ぴよちゃんさま手相とか好きなの?」

「…まぁ、少し。」


そう言って私の手をまじまじと見つめるぴよちゃんさま。
…うふふ、なんかちょっと恋人っぽくなってきた感じじゃない?
ついニヤけてしまいそうになる顔を必死で抑えていると、ぴよちゃんさまが急に顔をあげた。


「…大したことない手相でした。」

「大したことないって…!」

「あ、でもこの線は…。人気線が入ってますね。」

「え!…やっぱり私って皆から人気あるもんねー、アイドルだもんねー!」

「…まぁ、良い方向に人気とは限りませんけど。悪い意味で目立つっていうこともありますし。」

「……ぴよちゃんさまはどっちだと思う?」

「…先輩は敵も多いし、後者じゃないですか。」


ひどいことを言いながらも、ニヤっと微笑むぴよちゃんさまはやっぱり可愛い。
このチャンスを逃すまいと、そのままぴよちゃんさまの手を握りしめると
物凄い勢いで手を振りほどかれた。……なんという鋭い視線。ぴよちゃんさまの貞操観念に完敗です。
























「…皆、合羽着てますけど。」

「いや…大丈夫でしょ!ほら、あの子とかかぶってないよ?」

「ほとんどの人はかぶってます。…絶対濡れますよ、このアトラクション。」

「うん、好都合!」

「…寒いですよ、今日。」

「ぴよちゃんさまから水が滴り落ちる様子を見てたら興奮ですぐにホットになると思うから大丈夫。」

「………はぁ。よくもそんなことを恥ずかしげもなく言えますね。呆れます。」


本気で残念そうなぴよちゃんさまの声にも段々慣れてきた。
私はいつでも自分の欲望に正直だから…と言い訳すると、彼はついに私から顔を逸らし鞄の中の小説に手を伸ばそうとした。


「ぴ、ぴよちゃんさま!ほら、あとちょっとだから本なんて読んでる場合じゃないよ!」

「…先輩と口をきいてるよりは有意義な時間になると思います。」

「ごめんて…そんな怒らんといてや…。」

「なんですかそのエセ関西弁は。」

「ふふ、そういえば大阪に来たのに関西弁話してへんなぁとおもてな。」

「…関西人はそういう変なイントネーションの関西弁が1番嫌いらしいですよ。」

「何、忍足に聞いたの?」

「はい。1度忍足さんにつっこみを強要されたので、関西弁で言ったんですがイントネーションがおかしいと、怒られたことがあります。」

「…うわー、何その面白いイベント!いつそんな会話してたの?」


おかしいな、ぴよちゃんさまがテニス部で話している会話なんて全部記憶してるはずの私が
そんな美味しいシチュエーションを逃していたなんて。


「あれはたぶん先輩が部活に入ってくる前のことだと思います。」

「…あー、そっかぁ…。見たかったなぁ。」

「…あの頃よりは今の方が断然部室内での会話は多い方ですよ。」

「そうなの?がっくんとか宍戸とかベラベラうるさいじゃん、いつも。」

「まぁ、向日さんや宍戸さんはそんなに変わりませんけど…。跡部さんは特に変わったと思います。」

「ふーん。前はどんな感じだったの?」

「………前はもっと…無口というか近寄りがたい感じでしたね。」

「へぇ。あんなに弄り甲斐のあるキャラも少ないと思うけど。」

「そんなこと思うのは先輩だけですよ。…先輩が入ってからじゃないですか、にぎやかになったのは。」

「…それって良いこと?」

「……いないよりは良いんじゃないですか。」

「ふふ、素直じゃないなぁぴよちゃんさま。可愛い。」

「やっぱり前言撤回します。」












「こんにちは!何名様ですか?」

「2人です!」

「はい、ではこちらの列にお並びください!」


いよいよ順番が回ってきた、と同時になんだか緊張してきた。
さっきのバックトゥザフューチャーとは違って屋外だからぎゃーぎゃー騒ぐのも恥ずかしくて出来そうにないし…。

その緊張が伝わったのか、後ろからぴよちゃんさまが愉快そうな顔で話しかけてきた。


「今更、濡れるのが嫌になりましたか?」

「だ、大丈夫だよ。こんなに人がいっぱいいるんだから…大丈夫。」

「何が大丈夫なのかわかりませんけど、また面白いこと言わないでくださいね。」


そう言って、先ほどの先輩の失態を思い出したのか笑い出すぴよちゃんさま。
それに突っ込む余裕もなくなってきている私は、もう相当緊張しているみたいだ。







全員が乗り込むと、乗り物はゆっくりとレールの上を動き出した。
横に何人か並ぶ形になっているこの乗り物。私の隣に座ったカップルがきゃぁきゃぁと可愛い声をあげている。
…なるほど、私もあんな感じで男の子の腕に纏わりつけばいいのか…!

学んだことは即実践が信条の私は早速ぴよちゃんさまに寄りかかり腕を巻きつけてみた。


「…何してるんですか、ちゃんと前のバーを持っておくように言われたでしょう。」

「い、いや…ここならぴよちゃんさまも逃げられないし絶好のチャンスだと思って…。」

「……そんなこと言ってられるのも今の内だと思いますけど。」


普段なら手を振りほどいて小一時間説教でもされそうなものなのに、
ぴよちゃんさまはそれをしようともせず不敵に笑うだけだった。

マジか…!ついにぴよちゃんさまも私の女子力の前にひれ伏したか…!
なんだかんだで私にベタベタされるのを満更でもなく思ってるのかな、うふふふふふ!

私は頬の筋肉の緩みをもはや抑えることも出来ず、ニヤニヤとぴよちゃんさまにもたれかかるのでした。




≪時間、それは悠久の流れ。その流れをさかのぼり……≫


ナレーションが始まり、ゆっくりと乗り物が進み「ジュラシックパーク」のロゴが刻まれた扉が見えてきた。
今日の快晴も手伝って気持ちがいい。だって隣にはぴよちゃんさまがいるんだもの!
ぴよちゃんさまが嫌がらないことをいいことに、さらにギュっと腕を抱きしめると、ますます幸せな気分になってきた。


≪ようこそ…ジュラシックパークへ!≫


扉がギギィと開き、聞きなれた壮大なテーマソングが流れる。
そこには作りものとは思えない程リアルな恐竜が。純粋に見惚れていると、ぴよちゃんさまが不思議そうに声をかけてくる。


「…あれ?怖がらないんですか?」

「……ねぇ、ぴよちゃんさま。私さすがにこの恐竜が作りものだってことぐらいわかるよ?」

「さっきあれだけ作りモノのアトラクションに騒いでたからてっきりこれもそうなるかと思ったんですけどね。」

「っふ、私はもう中学3年生よ?こんな子供騙しじゃ怖がらないもーん。スゴイとは思うけどさ。」


ちょっと拍子抜けした様子のぴよちゃんさま。なるほど、私がこの恐竜にビビって騒ぎだすと思ってたんだね。
残念でした!…しかし、本当にこれって急流滑りのアトラクションなのかな?
このまま行くと普通に恐竜を見学して、はいお疲れ様でした〜みたいな流れになりそうだけど。
ただの恐竜見学アトラクション…なのかな…?

聞こえてくる鳥の声と、おだやかな雰囲気につい瞼を閉じてしまいそうになっていると



≪次はハドロザウルスの入江です≫



ビーッビーッ…ビーッ


「…ん?何?」

「………。」

響き渡る警告音。
そして目の前にみえるレールからどんどん逸れて、物々しい雰囲気のエリアへと進む乗り物。


≪ご安心ください、すぐにもとのコースに戻します≫


アナウンスが流れたけれど、乗り物は止まることなく危険そうな場所へと進んでいく。
先ほどまでの大人しそうな恐竜とは違って、肉食丸出しな野性味あふれる恐竜がそこら中に溢れ、
人間が着ていたものと思われる服を小さな恐竜が引っ張っているのを見て、少し不安に襲われる。


「…なんだろうね、故障かな?」

「……え?」

「え?だって、これ正しいコースじゃないっぽいよ。めっちゃ警告音なってたし。」

「…あぁ、そうですよね。まぁ、もうすぐ係員が来て止めてくれるんじゃないですか?」


相変わらずぴよちゃんさまの腕にしがみつく私を見て、真面目な顔で答えてくれるぴよちゃんさま。
うん、やっぱりそうだよね。周りのお客さんも落ち着いてるし、きっと大丈夫なんだろう。

そう高をくくっていたのだけど、コースはどんどんと怪しい動きを続け
ついに真っ暗な建物の前まで来てしまった。中からは恐竜の叫ぶ声が絶え間なく聞こえてくる。



「ちょ…ぴよちゃんさま、これ大丈夫?」

「…さぁ。どうなんですかね。」

「ど、どうなんですかってそんな落ち着いてる場合!?これがもし間違ったコースだったらここに居る人皆危ないんだよ!?」


さすがに、先ほどのアトラクションよりも乗っている人数が多いこともあって
小さな声でぴよちゃんさまに抗議してみたけど、それでも涼しい顔をしている彼が本当に理解できない。

だってさっきからずっと警告音がなってるし、今だって…ほら、もうこの乗り物は止まらないし…!



≪…まだボートはコースをはずれている。トランスポートステーションでボートを止めるんだ。≫


無線から聞こえてくるような声がしたことで、少しホっとしていたのも束の間。
私はとんでもないものを見つけてしまう。


「ねぇ…さっきのアナウンスが言ってたトランスポートステーションって…ここのことかな?」

「…恐竜に破壊されてるみたいですね。人もいないですし。」

「ちょっと…じゃあここで止めないといけないのに人がいないってことじゃん!ど、どうするの!?」

「…っく…。ごほん、ごほんっ…大丈夫ですって、きっと。」

「何が大丈夫なの!?ほ、ほらなんかレールがどんどん上がっていくんだけど!これどこに向かってるの!?」


先ほどまでの明るい屋外とは違い、警告音と恐竜の鳴き声がこだまする屋内はどう考えても危険なにおいがする。
そして、どんどん上昇していく乗りものに不安を覚えた私は、ぴよちゃんさまの腕から離れ、
前のバーをしっかりと握りしめる。……何なの、どうするのよ…!降りることもできないし、このまま…危険なコースを進み続けたら…!


今すぐこのボートが止まって、係員の人が助けに来てくれるのを心から望んでいたけどそんな願いもむなしく。
暗闇の中でもうアナウンスも聞こえなくなっていた。そして、赤く光るライトと、騒ぎ出す恐竜たち。


「…あれ、先輩もう腕はいいんですか?」

「なっ、何言ってんのそんな呑気なこと言ってる場合じゃないよ!ちゃんと掴まってないといつこのボートが転落するか…」


やけに余裕なぴよちゃんさまに若干キレ気味に抗議していると、
ふいに体が軽くなった。



「っ…きゃああああ!」


バシャンッ



気持ち悪い浮遊感が少しあって、あ、もしかしてこれが急流滑りのアトラクションだったのかな
と思って目を開けるとまだそこは暗闇の中。……駄目だ、コレ本当に間違ったコースを進んでるんだ…!


周りの乗客たちも徐々にざわめきはじめ、その中には悲鳴も混じっていた。
…ど、どうしよう…このままだと皆…皆死んじゃう…!


「ぴよちゃんさま、私降りる。」

「な、何言ってるんですか無理ですよ!座っててください!」

「いや、大丈夫!さっきのトランスポートステーションはまだ無線は繋がってるみたいだったから、そこで知らせてくるよ!」

「ブフッ!ちょっ…ふふっ、だ、大丈夫ですから…!座ってください!」

「駄目だよ!このままだと皆どうなるかわかんないんだよ!?私がなんとかしなきゃ!あそこに行けばこのボートを止められるはず!」

「…っふふ…もう手遅れですから、とにかくバーに掴まって…。」



勇気を振り絞って立とうとする私を、必死にぴよちゃんさまが止める。
だけど、その顔は暗い中で良く見えなかったけど…心なしか笑顔な気がして…何でこんな時に笑ってられるの?

自分の力ではどうしようもない状況に、もう半分泣きそうになっていると
無情にも大きな警告音が鳴り響いた。

段々と乗り物の速度が遅くなり、その行く手に…何かうごめく物体が見える。


「…ねぇ、ぴよちゃんさま…あ、アレ……!」

「……先輩、しっかりつかまってないと危ないですよ…!」






目を凝らして見てみると、先ほどまでの恐竜たちとは比べ物にならないぐらい大きな
ティラノサウルスがこちらを向いて吼えていた。

その登場に驚いて、バーをぎゅっと握りしめた瞬間。



「いっ……ぎゃぁあああああああああ!」






とてつもない浮遊感に襲われた私は、何が起こったのかわからずただ叫ぶことしかできなかった。




バシャァアンッッ



「ぶわっ!つめ…っ!」


顔や体に叩きつける水しぶきを感じて目を開けてみると、そこは既に屋外で。
まだ頭の中が混乱している私を壮大なテーマソングが包み込む。


≪…それが…ジュラシックパークなのです!≫





「はーい!皆さまお疲れ様でした、こちらからお降り下さい!」




陽気なお姉さんの声で、やっと我に返った私。
びしょ濡れになっているのなんて気にする前にもっと気になることがある。


「…なんであのお姉さんあんな普通なの?わ…私達は危ない目にあったんだよ!?故障のせいで!」

「ふふっ…まだ言ってるんですか。あれはああいうアトラクションなんですよ。」

「……へ?」

「だから、危険なコースに進むのは最初から決まってたんですよ。普通わかるでしょう。


またニヤニヤと私をみるぴよちゃんさま。言ってる意味がよくわからない。
………つまりあれは故障なんかじゃないってこと?


「ひ、ひどい!ぴよちゃんさまわかってたら何で言ってくれないのよ!」

「いや…また面白い先輩が見れそうだなと思って。…っく。」


頭も体も水でびしょ濡れになったぴよちゃんさまがまたさっきのように笑い出す。
…アトラクションにまたもや翻弄されて恥ずかしい姿を見せてしまった。私の頭に血が上り、顔が熱くなっていく。


「…あ、そうだ。これ途中で写真撮ってたはずですよ。」

「え?!ど、どこで?」


スタスタと出口へ向かうぴよちゃんさまについて行くと、そこには乗りものに乗っている人間の写真が何枚か映し出されていた。
その中の一つを、よく見てみると。


「……先輩、ひどい顔してますね。」

「しょうがないじゃん!怖かったんだから!っていうかぴよちゃんさまはなんでこんな真顔な訳!?」


口と目を最大限まで開けて、間抜けな顔をする私の隣には真顔のぴよちゃんさま。
…これ落ちるときに撮った写真だよね…?


「…いや、このアトラクション知ってたんで。あぁ、落ちるんだなって。」

「そ、それでもスゴイよ。ほら、見てこの乗り物の中でぴよちゃんさまだけだよ、こんな真顔なの。」

「…もういいでしょう、行きましょう。」

「あ、待って!この写真買えるみたいだよ!私、買ってくるね!」


先ほどまでの怒りはどこへやら。上機嫌な私は写真カウンターへと向かった。


そんなの買わなくていいとぴよちゃんさまが後ろで騒いでたけど
こんな写真絶対二度と撮れないもん。一生の記念になるよ、これは!


楽しい思い出がどんどん増えていきます。