氷帝カンタータ





番外編 秘密のランデブー −SPIDER-MAN−





「さ、そろそろ次は行っちゃいますか…!」

「どこにですか?」

「もっちろん!スパイダーマン!もう私これが楽しみで仕方なかったんだよね。」

「あぁ…。そう言えば映画…見たことないですね。」

「なっ!…な、なんと哀れな……。

「その顔ムカつくんでやめてもらっていいですか。」


だってだって…!あんな素晴らしいヒーローにまだ出会っていないだなんて…
私がスパイダーマンに出会ったのは今から何年前のことだっただろうか。

当時あの映画を見た幼き少女だった私は、すっかりスパイダーマンに惚れてしまったものだ。
キラメく海外の闇夜を潜り抜けて、悪を退治するその姿に惚れない女の子はいないだろう。
そんなスパイダーマンに今日…会えるというんだから、胸がトキメかないはずがない。



「ぴよちゃんさまもきっと大好きになると思うよ!さ、行こう!」

「こっちです、勝手に走りださないでください。」



やんちゃな小学生よろしく、すぐさま走り出そうとする私の腕を
ぴよちゃんさまが、がっしりと捕まえた。年上の威厳なんてまるでありまへん。

私のふくよかな二の腕にぴよちゃんさまの指の力がぐっと加わる。
そのまま歩いて行こうとしてるけど、それだとまるで私が何か悪いことを仕出かして連行されてるみたいじゃないですか。
ぴよちゃんさまの無表情も手伝って、すれ違いざまに他人から「可哀想…」みたいな視線をびしばし受けてるじゃないですか。


「…ね、ぴよちゃんさま。に、二の腕じゃなくて手を握ってくれてもいいんだよ?」

「いえ、ここが掴みやすいので。」

「……二の腕って、その人のおっぱいの柔らかさなんだって。知ってた?」



バッ



どこかで聞いたことがあるような、ないような噂を伝えた瞬間
顔を真っ赤にして目を見開くぴよちゃんさま。
先程まで無遠慮に掴まれていた二の腕は一瞬の隙に開放されていた。



「なっ…何を言い出すんですか、あんたは!」

「…っふ…ふふ、そんな焦らなくても…っぷ……。」

「もう知りません。」


赤くなったかと思うと、次はいつもの不機嫌な顔に七変化。
眉間に皺を寄せたままスタスタと歩いて行ってしまう後輩を追いかける。
いくら謝っても振り向きもしないところを見ると、相当恥ずかしかったんだな…。

全くもう、どこまで可愛いのよ。
















「おわぁあ!見て、ぴよちゃんさま!スパイダーマンだー!」

「…40分待ちですね、さほど混んでいないようです。」

「ねっ、写真撮って撮ってー!」



アトラクションの前には大きなスパイダーマンの像。
その赤と青のスーツを見るだけで私のテンションは一気にMAX。
対照的に相変わらず無表情なぴよちゃんさまにカメラを手渡すと、大人しく撮影してくれた。

そういえば、ぴよちゃんさまって写真撮ってくれる時に「はい、チーズ☆」とか言ってくれないから
いつ撮ったかわからないんだよね。今時プリクラの機械でも言ってくれるぞ、そのぐらい。

そんなことを考えながら、シャッターを今か今かと待ち続け、テンションの高いポーズをキープしていると
「いつまではしゃいでるんですか、恥ずかしい。」等と罵られる始末。
ぴよちゃんさまだと何故か許せてしまうのはどうしてかな、何だろう、ご褒美とさえ思えちゃうよね。



記念写真をばっちりおさめ、いざアトラクション内に入ると既に長蛇の列。
本日3回目の待機列並びなので、もう慣れっこだ。
すかさずぴよちゃんさまとの話題リストを取り出すと、若干げんなりした顔をされた。
本なんて読ませないんだからね!




「じゃあ、次の話題はー…氷帝メンバーをあてはめちゃいまSHOW☆のお時間でーす。」

「…何ですか、それは。」

「簡単だよ、私が今から言う役割に1番当てはまる氷帝メンバーをぴよちゃんさまが答えるだけ!」

「何か楽しいんですか?」

「まぁ、主に私が楽しい。」


怪訝そうな顔をするぴよちゃんさま。
それもそのはず。だって、この遊びの趣旨は…

「じゃあー、氷帝メンバーの中で彼女にするなら?」という質問に対して
ほぼ強制的に私の名前を答えてもらうというところにミソがあるのですから。


それを聞きたいがために用意した話題なんですから!ちょっとぐらい良い思いさせてください!


「では、まず最初。氷帝の大黒柱と言えば?」

「大黒柱…。跡部さんと言いたいところですが…、監督じゃないですか?」

「ほー!確かに、そこは盲点だったわ。あの、いってよしポーズが、たった二本の指が君たちを動かしているんだね。

「そういう言い方されるとなんか嫌ですけどね。」

「じゃあ次は…、氷帝のチャラ男は?」

「……………芥川さん。」

ぶふぅっ!えええ!そこ!?斜め上の発想だね、なんか!」

「…特に意味はありませんけど、1番最初に思い浮かびました。」



てっきり跡部か忍足の名前が出ると思ってたから…
意外とぴよちゃんさまの目から見えている「氷帝テニス部」は私にとって面白いものかもしれない。
ジロちゃんがチャラ男って…まぁ、あながち間違いでもないんだろうけど。



「でもジロちゃんって、そんなに女の子はべらしてるイメージある?」

「…ないですけど、でも女子にベタついてるのはよく見ます。」

「あぁ…なるほどね。よく見てるね、ぴよちゃんさま。」

「絶対に言わないでくださいよ。」

「大丈夫、大丈夫。では次。お兄ちゃんにするなら?」

「お兄ちゃん…ですか。迷いますね。」


腕を組んで、顎に手を当てて真剣に考えるぴよちゃんさま。
いいぞいいぞ…この流れで、「じゃあ彼女にしたいのは?」まで持っていくぞ!
そんな私のギラギラとした思案に気付かないまま、ぴよちゃんさまは悩み続ける。


「しいて言うなら…跡部さんでしょうか。」

「げええ!あんな兄ちゃん嫌すぎるでしょ!絶対グレるよ、上があんなだと。」

「…まぁ、尊敬できるところは多いですし。」

弟が必死にお小遣いを貯めて買ったプリンとかを、冷蔵庫に入ってたからと言って勝手に食べるタイプだよ、あいつは。
 この家のものは全て兄である俺のものなんだよ、とか言いながらむっしゃむしゃプリンを食うよ。やだ、そんなお兄ちゃん!

「……そんな低レベルな争いしなさそうですけどね。」

「ま、まぁいいや。どんどんいくよ!えーっと…じゃあ、氷帝メンバーの中で彼女にするなら?」





言った。





さぁ、こい。恥ずかしがりながら「…先輩しかいないでしょう。」と言うがいい、言ってください!

若干前のめりになり、答えを待つ。じりじりと詰め寄っていく私を怪訝な顔で見つめながら

ぴよちゃんさまが口を開いた。






















「樺地ですかね。」

「なんでやねーんっ!」











ビシっと決まった私のつっこみが、ぴよちゃんさまの肩に突き刺さる。
忍足先生に習った裏手つっこみがここにきて役立ちました、本当にありがとうございます。



「…なんとなくですけどね。大人しくて手がかからなさそうですから。」

「いやっ…えーと…そういうことじゃなくて、…いや、でも確かに樺地はいい子だもん…ね…。

「……他に誰かいます?」

「…いや、いい。じゃあ次の質問にするわ。」


焦るな、。聞き方が悪かったんだ。
確かに彼女とかストレートすぎたもんね、そうだよぴよちゃんさまにとって私はどういう存在か。
それをもっと突き詰めて聞くべきだったよね。




「氷帝のアイドルと言えば?」

「向日さん。」


「氷帝のお嫁さんにしたいNO.1候補は?」

「鳳じゃないですか?」


「お姉ちゃんにしたいのは?」

「忍足さんですかね。」


「じゃあ、お母さんといえば?!」

「宍戸さんしかいないでしょうね。」


「もういい実家に帰らせていただきます!!!」

「…っぷ…、ふふ…拗ねないでください。」


私の必死の形相を見て、ぴよちゃんさまがついに噴出した。
なんで…なんで私の名前が一切出ないんだ…
こんなに可憐な女子が、汗臭い男子に惨敗とかおかしくないですか…世の中間違ってる…


「…じゃ、じゃあ私は?」

「ついに質問の主旨が変わりましたね。」

「だって…、もう他に役割残ってないじゃーん!」

先輩は…隣の家のおばさん…っていう感じですね。」

「何その微妙なポジション!つまり赤の他人じゃん!せめて親族にしてよ!」

「これ程先輩にしっくりくるポジションないでしょう。」


口の端を釣り上げて笑うぴよちゃんさまは、本当に先輩をなんだと思っているのだろうか。
ここは…ここは大人しく空気読んどけばいいのにさぁ…!
がっくりうなだれる私に、ぴよちゃんさまが列の移動を告げた。


あっという間に列は進んで、気づけば大きなモニターのある部屋へ辿り着いていた。
そこに映し出されていたのはニューヨークの街を破壊するオクトパス博士達。
アメコミ調のオクトパス博士を見て、まず最初に思ったこと。







「あのオクトパス博士の髪型ってぴよちゃんさまに似てるよね。」





ほら、あのキノコカット…と言いかけたところで、
視界の端にぴよちゃんさまが拳を天高く振りかざすところが見えた。


「ちょ、ごめ…!ごめんって!」


「俺の髪型はあんなにダサくありません。」

「そ、そうだよね!ぴよちゃんさまのカットはなんていうか、あんな奇抜ではなくて
 逆に言うと昭和スタイルというか由緒正しき男子学生スタイルだもんね。」

「全然フォローになってませんけどね。」


そんなことないよ、ほらやっぱりアレは…ともう1度スクリーンを見ると
やっぱりぴよちゃんさまの真似をしたとしか思えないようなオクトパス博士が写っていて
思わず噴き出した。
いや、やっぱり似てるわ。

その瞬間にぴよちゃんさまの「先輩。」という
凍てついた低い声が聞こえたので、すぐさま笑うのはやめましたけど。後輩が怖いよ、ママ。



「…というか、この映像って…。」

「あのオクトパス博士とかいう人が一味を従えて街を破壊してるんですよね?」

「そうそう。皆スパイダーマンの敵なんだよー。」

「しかし、あの武器の発想はおもしろいですね。」


スクリーンに映し出されていたのは、オクトパス博士が手に持った銃のような武器から
緑色の光線を発射するところだった。
その光線を当てられた列車は重力に逆らい、空高くへと登っていく。
そして、もう一度博士が光線を列車に当てると…
一瞬にして浮力を失い、列車は重力に引きつけられるように地面へ真っ逆さま。

思わず目を覆ってしまうような、あまりにも酷い状況だった。
世界征服をもくろむ博士は、人類が降伏しない限り攻撃を続けるというのだ。

その時スクリーンに砂嵐がはしり、スパイダーマンが働く編集社の一室が映し出された。
そこにいるのはイライラした編集長と、スパイダーマンの正体である冴えないピーター・パーカー。
この映画を知らないぴよちゃんさまに登場人物の説明をしつつも、内容を聞いてみると
どうやらあのオクトパス博士が暴れている現場に向かい、状況を把握し報道したいのだけれど
編集社の従業員はは皆恐れをなして逃げてしまったらしく現場に駆け付ける記者がいないようなのだ。

それにイラついた編集長はなんと、このアトラクションに並んでいる私達を
その現場に向かわせる、というではないか。何とち狂ったこと言ってんだ、このおっさんめ。
もちろんスパイダーマンもそれは危険だと止めるのだけれど、そんなことを聞く編集長ではない。
何となく不安に思っていると、待機列はどんどん先に進みついに私達の順番がまわってきた。

先ほど手にとるように指示された3Dメガネを装着し
編集長自慢の乗り物「スクープ」に乗り込む。



「…ぴよちゃんさま、なんかまた危険なことに巻き込まれそうだね。」

「そりゃアトラクションなんですから、そうでしょうね。もうそろそろわかってきたでしょう?」

「…わかってはいるけど、やっぱり怖いよ。」


頭では理解していても、いざ乗り物に乗ると一瞬で感情移入しちゃうんだよね。
じんわりと握りしめた掌が熱くなってきているのがわかる。
バタンッと大きな音がしたかと思うと、係員さんがスクープの扉をぴっちりと閉めた。

12名の見学者を乗せて走り出したスクープ。
光景はすぐにニューヨークの市内に切り替わった。



≪見ろ!スパイダーシグナルだ!ということはスパイダーマンが近くにいるということだ!≫



乗り物内に響く編集長の声に胸が高鳴る。
ついに…ついにスパイダーマンに会えるのね…!



≪特ダネだ!大売り出しだ!ヘマをするなよ!……あ、いや、気をつけてな。≫


そこまで言うと、無線がブチっと切れた。
急に見放されたような気がして不安になったけれど、
その不安は次の一瞬で消えさるのだった。



ドンッ




≪君たち、どうしてここへ来たんだ!ここは危ない!≫



「き…きゃぁああああ!スパイダーマァアアン!」

「ちょ…っいきなり大きな声出さないでくださいよ。」



私達の乗り物に飛び乗ったスパイダーマンが警告をする。
ここは危ないから早く帰れと。もちろん私もすぐに帰りたい。
だって絶対に危ないじゃない、オクトパス博士に見つかったらと思うと…!

だけど…だけど憧れのスパイダーマンをもっと見たい…!


「ぴ…ぴよちゃんさま、どうしよう。スパイダーマンが私のこと見てた!

「俺のことも見てましたよ。3Dメガネがあるんだから当たり前でしょう。」

「まーたまた。絶対に彼は私しか…」


その時はまだ話す余裕があった。しかしグルっと乗り物が回転し、
扉を進んだその先の光景を見て、私は思わず口に手を当てて息をひそめた。


オクトパス博士たちが倉庫のようなところで、新しい武器の性能を検査していた。
物音のしない場所で、私達の乗り物が一歩、また一歩と彼等に近づく。

あ、あんまり近づきすぎると気づかれ…


≪なぁんだぁあ!?お前ら!!≫


「うっ…うわあ!気づかれた!まずい!」


その瞬間、乗り物は急旋回し逃げるのだけれど
先回りしたエレクトロ(電気を操る敵)に通せんぼされてしまった。

叫ぶ暇もなく、エレクトロは電流を私達に浴びせる。


「きゃああああ!ぴよちゃんさま大丈夫!?」

「…ええ、大丈夫です。そんなことより前持っておかないと危ない…」


危ないですよ、とぴよちゃんさまが言いかけたところで
またもや乗り物が急旋回した。私は座席の端まで吹き飛ばされそうになる。


「う…ぉおおお!あっぶな…ちょ、ちょっとこれマズイんじゃ…!」


もう特ダネどころじゃないよ、編集長!
見学者をこんな危険な目に合わせるなんて、新聞社の名誉に関わるよ!


思考もついて行かない程の急展開ばかりだったけど、
敵が私達を襲おうとする度に、どこからともなく飛んできて助けてくれるスパイダーマン。
そんなヒーローの登場に、どうしようもなく私のテンションはあがってしまう。


しかし、スパイダーマンの活躍も空しく
私達はついにオクトパス博士の、例の武器と対峙してしまう。


「あっ…あれって…ぴよちゃんさま…!!」

「…さっき見た、重力装置ですね。」

「だ、だめ…あんなの絶対無理…!」



≪くらえええ!≫



「きゃあぁあ!……や、やだやだやだ!あがっていってる!」


オクトパス博士の光線を浴びたかと思うと、
私達の乗り物は急上昇を始めた。先ほどまで遥か上空にみえていたビルの看板が見えたり、
空が近くなったり…え、これ本当に上昇してるんじゃないの?



≪まってくれ!絶対に助けてやる!≫



「ス、スパイダーマン助けてぇえええ!」



そんな私の叫びも空しく、

乗り物は上空から、真っ逆さまに地面を目がけて落ちていく。



「わぁあああ!ダメ、このままじゃ死んじゃうううう!」










ボンッ





思わずぴよちゃんさまの腕を抱きしめ、目を堅く閉じていると、
思っていた程の衝撃が伝わってこなかった。
おそるおそる目を開けてみると、そこにはスパイダーマンの蜘蛛の糸。
地面スレスレの場所に張られた蜘蛛の巣によって私達は助かったのだった。



「え…、わ、私達助かった…?」

「…確かにかっこいいですね、スパイダーマン。」

「う…うわあああ!やったぁああ!さすがだよ、スパイダーマァアアン!
 スパーイダッ!スパーイダッ!!それ、スパーイダッ!


「ちょっ…、先輩うるさいですよ。」


拳を高く掲げ、スパイダーコールをしていると
一緒にこの困難を共にした乗り物の見学者達も、皆でスパイダーコールをしていた。
私の方を見ながら、大爆笑している人もいれば
一緒になってスパイダーコールをしてる人もいる。

私はなんだかそれが嬉しくって、係員の人に苦笑いで止められるまで
スパイダーコールの大合唱を続けていた。
隣のぴよちゃんさまはものすごく恥ずかしそうに俯いていたけれど。

乗り物を降りたところで、他の乗客からハイタッチを求められたり
「あんたのおかげで、おもろかったで」と大笑いされたり…
なんだかよくわからないけど、大阪のノリっていいなと思いました。














「…先輩には恥の概念というものがないのですか?」

「どっ、どうしたのぴよちゃんさまいきなり。」

「あんな大声で騒いで…、一緒にいるのも恥ずかしかったです。いっその事地面にぶつかって消えてしまいたかった程です。

「ごめ…ごめんって!あの、ほら、憧れのスパイダーマンに会えたことでテンションが…ね?」


アトラクションを出たところで、しかめっ面のぴよちゃんさまに必死に弁解をする。
確かに冷静になって考えてみれば、ぴよちゃんさまは恥ずかしかったはずだ。

私だって、道頓堀でいきなり忍足が六甲おろしを大声で歌い始めて
それにつられて大阪人が大合唱をしながら迫ってきたら、どうしていいかわからなくなる。


想像しただけで恐ろしい光景ですよね。
一緒に歌わないとたこ焼き投げつけられるんじゃないだろうか、何それ怖い。



「もうしませんから…!先輩なのに迷惑かけてごめんね。」

「……。やっぱり先輩は隣のおばさんなんかじゃありませんね。」

「へ?」


















先輩は、氷帝の赤っ恥です。」


















「ねぇ、ぴよちゃんさま何でそんな朗らかな笑顔でそんなこと言うの?ねぇ。」

「ふふ…、いや……先輩の存在ってもう、まさに赤っ恥だなぁと。」

「ちが…っ!っていうかもうそれ意味分かんないじゃん!氷帝のアイドル・氷帝のお母さん…ときて、氷帝の赤っ恥って何それ!



勝手に1人でツボにハマってしまい、笑いが止まらないぴよちゃんさま。
全く面白くない私は怒ってずんずんと歩き始めたのだけれど、
後ろから「待って下さい、赤っ恥先輩!」なんて声をかけてくるもんだから、
皆に振り向かれちゃったじゃない。いつまで笑ってんのよ、ぴよちゃんさまめ。

振り向くとお腹を抱えて、必死に笑いをこらえるぴよちゃんさま。



……うん、もうなんか…どれだけ馬鹿にされてもいいからずっとそうやって笑っててください。



ぴよちゃんさまが可愛すぎて、先ほどまでの怒りはどこへやら。母性に満ちた頬笑みで見つめていると
私のその頬笑みがまたツボに入ったのか、ついには地面にうずくまって笑いだした。
後にも先にもこんなぴよちゃんさまを見たのは私だけなんだろうな。



なんかとっても複雑な心境だけど、ぴよちゃんさまが楽しそうだからいっか。