「じゃあ、結局さ。私の性格がどのように改善されればがっくんは付き合ってくれるの?」
「改善とかそういう問題じゃないんだよな、もう。1回生まれ変わるしかない。」
今日は休日。部活が午前中に終わったので、一旦家に帰って着替えてから
私達はスタバで優雅なティータイムを楽しんでいた。
人々が忙しなく行き交うビルの入り口を眺めながら、カウンターに2人並んで座る。
隣でノートを開きながらも、たぶん確実に集中していないと思われるがっくんに
唐突な話題を振ってみたら、意外にも反応が返ってきた。やっぱり集中してなかったんだ。
いつもなら余裕で無視されるであろう話題にがっくんが乗ってくれたことが嬉しくて、私は少し調子に乗っていた。
「がっくんは知らないかもしれないけど、私結構一途だと思うんだ。乙女っぽいところあるし、こう見えても。」
「ふーん。」
「そういうのって世間的にはポイント高いんじゃないかな?彼女ポイント。」
「だなー。」
「……心底どうでも良さそうな顔してるね。」
「いや、聞いてる聞いてる。」
携帯の画面を見ながら、いちご味のフラペチーノを飲むがっくん。
必死に自分プレゼンを頑張ってる私の声が虚しく彼の耳を通り過ぎていく。
「がっくんはどういう性格の女の子だったら彼女にしてもいいな、って思うの?」
「んー…可愛くてー、五月蝿くなくてー、でも明るくて、ノリのいい感じの奴。」
「なるほど、私がクリアできてないポイントは五月蝿いってところだけか…。」
「いや、最難関の【可愛い】ってとこがクリアできてないだろ。」
「大丈夫、人間80歳になれば大体皆同じような可愛いばあちゃんになるってお母さんが言ってた!」
拳を握りしめて力説する私の顔を見て、呆れたようにふぅと息を吐くがっくん。
くそっ、もう話題に飽きちゃったか…!なんとか彼の意識を繋ぎとめようと、頭の中で話題の引き出しをどったんばったん開けていると、
フと目の前のがっくんと目線が合った。
「……ん?何?」
「……って、可愛くない…こともない……のかもしれないのか…?」
「よし…よし!効いてる、さっきのおばあちゃん理論が効いてる…!そうだよ、がっくん!私って平凡ではあるけど、年取った時に可愛いおばあちゃんになりそうな顔してるの!」
がっくんは手のひらで私の鼻の下や、目から上を隠しながら首を傾げる。
どこかを隠せば…まぁいけるか……いやギリギリ無理…
そんな呟きに多少は胸を痛めながらも、私はここぞとばかりに自分を猛プッシュする。
「どうかな?がっくんの彼女に弊社の最新式ノリが良くて明るい女の子、はいかがかな?今なら、大幅プライスダウンの上さらに!この抹茶フラペチーノの残りもあげます!」
「……抹茶フラペチーノは魅力だけど……うーん……。」
「そこをもう一声!」
「やっぱ無理!」
元気よく笑顔で言い放つがっくんに、私はわざとらしくカウンターに倒れ込む。
……まぁ、わかってたけどさ。どう考えても私達が恋人なんてありえないけどさ。
「……ちなみにどこが敗因だったのでしょうか。」
「ちょっと考えてみたんだけどさー、
の裸を想像してみても、全く興奮しないんだよな。」
裸…私の裸を一瞬でもがっくんが想像したんだというドキドキと同時に、
私に装備された恐らく最大の武器、
裸をもってしてもがっくんに女を感じさせることができないという悲しすぎる事実が私を襲う。
何が面白いのか、ケラケラと笑って私の抹茶フラペチーノの残りを飲み干すがっくん。
下手すれば中学生女子が向こう20年は立ち直れないような辛辣すぎる発言をされたはずなのに、
私が明らかに真顔で落ち込んでるのを、完全無視するような優しさの欠片もない無神経系男子のはずなのに、
「うわ、めっちゃ美味しいじゃんコレ!こっちにすればよかった!」と無邪気に笑うがっくんを見ていると
やっぱりなんとかして彼女にしてもらえないかな、と考えてしまうのだった。