氷帝カンタータ





夏空セレナーデ(5)






「よし、本日はここまで。行ってよし。」

「…ありがとう…ございました…。」




やっと終わった…!
レギュラー陣に風呂でもみくちゃにされているところに先生の声が響き渡ったのが4時間前の出来事。
さすがに女子を男子風呂で投げ飛ばしている所を見られるのはヤバイと思ったのか
全員が硬直していたけど、先生は特に気にすることなくご飯の時間のお知らせだけを残して立ち去った。

…いや、普通大問題になるでしょうよ。



そしてご飯のあと、ジロちゃんと戯れようと近づいた瞬間、
先生に首根っこを掴まれレッスン室に引きずりこまれたのが2時間前。

そしてやっと今、地獄のレッスンタイムが幕を閉じたのであった。
明後日がコンサート本番。
先生の気合の入り方も尋常じゃない。

まぁでもだいぶ完成には近づいてきたし…明後日は無事迎えられそうです。


「じゃあ先生、おやすみなさーい。」

。」

「はい?」



神妙な顔で私をまっすぐ見据える先生。
え、怖い、何?なんかしたかな、私?


「…恋愛はご法度だ。」

「……………へ?」

「部活内での恋愛は、あまり推奨しない。」



心苦しそうな顔で話す先生。




えっと、


先生さっきのお風呂での光景見ましたよね?

女子が投げ飛ばされてたんですよ?

恋愛する男女はあんなことしないんです。

一本背負いされたりギブって言うまで技をキめたりしないんです。

先生はどこをどう見て私と男子部員が恋愛関係にあると思ったんでしょう。

そんなんだからいつまでも独身なんですよ!




「せ…先生、お言葉ですが誰が私に恋愛感情を抱いているというのでしょうか。」

「私には、全員がお前に好意を寄せてるように思える。
 そして、お前もそれに応じているように見える。恋愛関係の縺れはチームに支障をきたす。」






あ、ダメだ先生、恋愛経験値なさすぎる。




これは冗談じゃなく真剣に言ってるみたいだ。



「あの……いや、まぁ…気をつけます。」

「テニス部の紅一点で、若い男に囲まれて舞い上がるのは仕方ないが、以後気をつけるように。」


っく……言い返したい!
ふざけんなと言い返したいけど、これ以上話しても話がもつれるだけだろうな…

なぜか私が禁じられた恋に揺れ動く乙女、
みたいな感じに思われてるのが悔しすぎるけど仕方ない…。


まぁ、私としてもメンバーの中から彼氏を作るなんて
考えても見なかったけど、よく考えれば…
他人からみればイケメンでかっこいい男子たちに囲まれてるのよね。
でも、彼氏て言ったら…あんなことやこんなこともするわけでしょ…?


うーん、そういう目で見たことなかったなぁ…。



























「お、おかえりー」

「……勝手に部屋はいらないでよー!」


悶々と先生に言われたことを考えながら部屋に入ると
渦中のメンバーが私の部屋に勢ぞろいしていた。
勝手に私のカバンからUNOやジェンガを取り出してわいわいと遊んでいる。

…こんなデリカシーのない奴等とはどう考えても「恋愛関係」にはなれないわよね。


「いーから早くUNOしようぜ!」

「はいはい。」


自分の座っている横の椅子をポンポンと叩き、着席を促すがっくん。
その顔はいつも通り無邪気で怒る気すら失せてしまう。

ふむ…がっくんが彼氏だったら…
うん……うん、いいかもしんない!
だって可愛いし、趣味も合うし、何より気を使わないから一緒にいて楽だし!


「何ぼーっとしてんの?。」

「あ、ごめんごめん。はい、リバース。」

「ああああ!俺のとこまわってこねぇじゃん!」

「てめぇにはいつまでもまわってこねぇよ。」


そういいながら跡部がスキップを出したことでまたもやがっくんの番が飛ばされてしまった。


「くそくそ、跡部!」


あぁ、そういう目で見れば見るほどがっくんが可愛く思えてきた!
先生、私がっくんなら恋愛関係になってもいいかもしれない!


の番だぞ!さっきから何考えてんだよー、集中しろよな!」

「あ…うん、ねぇがっくん、私のこと好き?」

「全然!」

「ちょ……いや、え…?全然?」

「うん、友達としてはまぁ普通かなって感じ。」


速攻で玉砕しました先生。
友達として好き!ですらないんですよ、普通なんですって。
駄目だ…がっくんはこういう恋愛とかそういうのはわかってないから駄目だ!

決して私が女子として駄目とかじゃない、大丈夫よ、強くなりなさい…!



「俺はちゃん好きー」


べったりと背中にのしかかってきたのはジロちゃん。
ふむふむ…ジロちゃん。可愛いし可愛いし何より超可愛いし!
こんな子が彼氏だったら毎日幸せかもしれない。
一緒に日向ぼっこして、野原で寝転んで…いいじゃん…
いいじゃん青春じゃん!


「ありがと、ジロちゃん…!でもジロちゃん、ラブじゃないんでしょ?ライクなんでしょ?」

「うん、そうだよー」

「…っく、じゃあジロちゃんそれがラブになっちゃったらどうするー?」


ちょっとふざけ気味に問いかけてみる。
一応未来地図を描いてみることも必要ですよね。


「まずテニス部は駄目。」

「え?」

「彼女が他の男に見られたら嫌でしょー?だから部活には入らせないの。
それでー、俺の家にずーっと置いとくの!毎日一緒だよ!」

「え……えと、じゃあもし彼女が他の男の子としゃべったりしたらどうするの?」

うん、おしおきするよー。


でた、笑ってないジロちゃんの目…!

だ、だめだこの子の知らない扉開いちゃった!
私そういうの駄目なんです!ヤンデレ属性はないんです!

う…うん、ジロちゃんとはこういう感じで友人でいるのがいいのかもしれない。



「ジローは独占欲強いからなぁ。」


忍足はまず却下だな。
…まぁ、でも一応真剣に考えてみよう。
一応女子には優しいし、大人びてるし可能性としてはありかもしれない。
でもなぁ…。

可愛くないんだよね。



「何見つめてるん、。」

「見つめてないわよ、可愛くないなぁって思ってるだけ。

「こんな可愛い男子中学生捕まえて何ゆうとんねん。」

「か…可愛い?どこらへんが?」

「この関西弁がまず可愛いやろ。あとは顔かな。」


ごめん、全然ピンとこない…

そんな「どやぁっ」みたいな顔されても…
あと自分で可愛いって言っちゃうところが可愛くない。


「たぶん、方向性間違ってるよ。」

「じゃあどういう方向で行けばいいん?」

「んー……ジャージの下にスクール水着着用とか。女子のね。

「……。」

「あ!あとはさ、ほら、こうやって二つくくりにしてー…。」


忍足の後ろに回り込み髪の毛を雑に二つくくりにしてみる。
この赤いリボン付きの可愛いゴムならいい感じに変態らしさがでるかもしれない。


「……………ほ、ほら!いいじゃん!

何や今の間は。

「いや…変態らしさがよくでてて素晴らしいよ?

「なんで目指す方向性が変態やねん」

「だって……ねぇ?」


宍戸に同意を求めてみるも、笑いすぎて返事も返してくれない。

宍戸って最近よく笑うようになったよね。
最初出会った時は、ツンツンして苦手だったけど
慣れてくると段々話しやすくなってきたしね。
部内では1番、なんていうか男らしくて義理堅いし、
忍足よりはアリかもしれない。


「宍戸っ、宍戸。好きなタイプの女の子ってどんなタイプ?」


忍足の髪型に笑い転げてる宍戸を揺さぶり起こして問いかけてみた。


「あー?なんでそんなこと今聞くんだよ。」

「いや、えっと、お見合いパーティーに登録してあげよっかなって思って!宍戸出会いないじゃん?」

「俺まだ中学生だぞ?」

「甘い!お見合いパーティーで大切なのは顔でも若さでもなんでもない!
 年収よ!年収0の宍戸なんか誰も相手にしてくれない!
 だからせめてプロフィールに好きな女の子のタイプをいっぱい書いて可能性を広げなきゃいけないの!」


怪訝そうな顔で私を見つめる宍戸とその他メンバー。
わかってるわよ、自分でもめちゃくちゃなこと言ってるって。


「宍戸はー、ボーイッシュな子が好きなんだよねー」

「おい、ジロー!バラすなよ、本当に登録されたらどうすんだよ!」

「っな……ボーイッシュ?」


え…私さ、よくこいつらに「男みたい」とか「女らしくしろ」とか言われてるよね?
それってつまり、私がボーイッシュってことだよね?

ということはつまり、宍戸のタイプって……



「ちゃうで。」

「……え?」

「今、私ってボーイッシュだしまさか宍戸って私のこと…!とか寒いこと考えとったやろ。」

貴様……!だ…、だってそうじゃん!あんたらがいっつも私に言ってるんじゃん!」

……ちゃうねん、はボーイッシュちゃうねん。」

「ボーイだよな。」


がっくんがケラケラ笑う。
それと同時に全員がプッと吹き出した。



「っ…ボーイってどういうことよ!」

「宍戸が好きなボーイッシュっちゅーんはな、
 普段はサバサバしてて活発やねんけどその中にも、ちらりと見える女の子らしさが萌える、ていう意味や。」


宍戸が忍足の後ろでよく言ってくれた、みたいな顔で拍手してるのがムカつく。
ていうかその説明だとさ、


「それって、まんま私じゃん?」

「おい、。今の説明ちゃんと聞いてたのかよ!」

「き…聞いてたよ、なんでがっくんがちょっとキレてんの!


「女の子らしさが必要なの!には全然ないじゃん!……全然ないじゃん!

「よろしい、ならば戦争だ。」


二回も強調するがっくんにつかみかかろうとした瞬間、
っぐっと両手首を掴まれる

「あー!せ…先輩!落ち着いて落ち着いて……」

「離して、ちょた!こいつらには体で覚えさせないと駄目なんだよ!」

ちょたに持ち上げられる私をみて、笑いながら逃げて行くがっくん、宍戸、忍足。
私がどれだけ女らしいか、拳で教えてやる!


「矛盾してます先輩!」

「いいから離してー!!」

ちょたに両腕を吊り下げられて、まるせ捉えられた宇宙人みたいな格好になってる。
足をじたばたしてみてもビクともしない…

「…ちょた、痛い。」

「っあ!ご…ごめんなさい!大丈夫ですか?」


パッと手を離し、私の手首をさすってくれる。
…優しい。このテニス部の中で優しさを持ってるのはいつでもちょただけだった気がする。




「おい長太郎!逃げろ、危ないぞ!」

「油断は禁物だぞ!」


ドアの隙間から馬鹿面さげて叫ぶ宍戸、がっくん、忍足。
もうあんたらはどうでもいいんだから、私とちょたのほのぼのタイムを邪魔しないでよ!


「…え?何が危ないんですか?」

の獲物を狙う目がわからんか。
 今はなぁ、ちょた優しい…こんな優しくしてくれるのはちょただけ…
 あぁ、私ちょたになら抱かれてもいい!
とか「そそそそそこまで考えてないよ!!」






本当に考えてないから、サっと私から適度な距離をとるのをやめて、ちょた…。

そんな怯えた目で見ないでよ、私は暴漢か。






「静かにしてくれませんか、集中したいんです。」


樺地と2人でジェンがをしていたぴよちゃんさまが声をあげた。

う…うわぁ、こんなに積み上がってるジェンが初めて見た。
どういうバランスで立ってるんだろう、これ。


しかし真剣な顔でジェンガとにらめっこするぴよちゃんさまの可愛さ…はんぱねぇ…!
はっ、ボーッとしてる場合じゃない、急いで写真におさめないと!


ピロりん♪

ピロりん♪


ピロりんピロりん♪


「…いい加減にしてください先輩。」

「えへへ、ぴよちゃんさまフォルダが潤いましたー。」

「なんだよぴよちゃんさまフォルダって、ちょっと見せてみ?」


ひょいっと私の携帯を取り上げるがっくん。
それに続きみんなが私の携帯を覗き込む。

い…いかん、犯罪スレスレの写真もあるっていうのに……!


「う……わ、なんだこれ!!」

「あー、あかんな、これはあかん、ブタ箱行きや。

「ちょ…返してよ!」

「ひ…日吉ってこんな顔するんですね。」

「ん?あ、これ?可愛いでしょー?部室で寝てる所を隠し撮りしたんだ!」

「え…、これはなんだよ。」

「え?あ…あー、ちょっと…シャワー室の扉から携帯を忍ばせて「貸してください。」


尋常じゃない勢いでがっくんから携帯を取り上げ、画像を確認するぴよちゃんさま。


あ…あちゃー…本人に見られるのはまずい。
私がぴよちゃんさまの立場だったら、間違いなく訴える、
そんな際どい秘蔵写真ばっかりなんだもん。


「……っ、どういうことか説明してください。」

「え?全部私が命からがら集めた珠玉の写真だよ?」

な・ん・で、こんな写真があるんですか


やだ、ぴよちゃんさまガチギレやー…
私の目の前にずいっと差し出された携帯には
ぴよちゃんさまの麗しいパジャマ姿が大きく映し出されていた。


「こ…これはー………怒らない?」

「怒ります。」

「…じゃあ言わな「女性に手を上げたくないんです。」


…怖いよー、目が完全にガチだよー…。
でも、言わないと本当にぴよちゃんさまに本当に殴られるかもしれない。
それは、ダメだ。ある意味ご褒美だけど、
まだ中学生でそんなマニアックなプレイに目覚めたくないの、私は。


「あ…あのさ、ぴよちゃんさまこないだ、毎朝庭で体操するのが習慣って言ってたでしょ?」

「…言いましたね。」

「で、朝ってことはパジャマ姿じゃん?」

「………。」

「で、見たいなって思って。たまたま近くのマンションに登って、
 たまたまぴよちゃんさまの家の方向を見たら、ちょうど庭が見える角度を見つけたのね?」

「…………。」

「これは神様が私に与えてくれたチャンスだって、そう思ったの私。
 だから朝の4:00から待ち構えて「わかりました、それ以上聞きたくありません。」


ぴよちゃんさまの顔にうっすら冷や汗がにじんでいる。
心なしか顔色もさっきより悪い気がする。


「……、もうええんや。楽になろ。」

「自首しろよ、。」



私の両肩に手を乗せ、諦めたように力なく微笑みかける忍足にがっくん。
いやいや…これまだ犯罪じゃないでしょ?
一応ぴよちゃんさまに事前に許可はとってるしね?


「…ぴよちゃんさまフォルダ作っていい?って確認したもん。」

「盗撮を容認したわけじゃありません。」

「………怒ってる?」

「いえ…、知り合いを辞めたいと思ってます。」

「や………やだやだ!すんません!もうしません!」


スライディング土下座で攻め込むも、ぴよちゃんさまの表情はかわらない。
やだ……ぴよちゃんさまに見捨てられたら
テニス部にいる意味なんかありゃしまへん!




「ひ、日吉。先輩も謝ってるんだしさ、許してあげろよ。」

「…鳳、じゃあお前が俺の代わりになれ。」

「ごめん、軽率な発言だったよ。」


ちょた…君はいつもさりげなく先輩の心を鈍器で殴っていくよね。


「ほな、がフォルダの写真全部消す、っていうのはどや。」

「っな…お、鬼かあんたはぁああ!私がどれだけ苦労したと思ってんの?!
 警察に補導されそうになったこともあるんだからね?!

「消してください。」

「………本気で?」

「消さないと、先輩とは二度と話しません。」

「……っく、背に腹はかえられない…けど…けど」

「おい、貸せ。」


ずっと部屋の隅でUNOのカードをきり続けていた跡部がいつのまにか
氷帝テニス部魔女裁判の輪の中に入っていた。


「ちょ、まっ」


ピッピッ




「ほらよ。」


跡部が放り投げた携帯には、無情にも「データがありません」の文字。


「あ…え、あ…ああああああ!まっじで全部消したぁああああ!


私の努力の結晶をいとも簡単に奪い去った跡部。
それを見届けたメンバーが、散り散りになり魔女裁判は終結した。

しかしこんなところで諦める私じゃない。
この窮地で私の脳内にひとつの悪魔的なひらめきが浮かんだ。


「合法的に写真を撮るには…はっ!わかった!
 私がぴよちゃんさまの彼女に「どうしても俺を怒らせたいんですね。」



ぴよちゃんさまの繰り出す「氷の眼差し」に怖気づき、
その場で崩れ落ちる私をそっと起こしてくれたのは



「…樺地。」

「……ウス。」

優しい目で私を見る樺地…
そうだよ、もう一人いるじゃない。
一番心の優しい素敵な少年が。


「…う…樺地ぃぃー!うわーーん!」


樺地の大きな身体に身を預け、私は思いっきり泣いた。
優しく私を受け止めて、すべてを包み込んでくれる少年の大きさに
私はいつしか惹かれていくのであ「離れろ。」


私の首を掴みベリっと私と樺地を引き離したのは、血も涙もない悪の帝王だ。


「……。」

「なんだ、暴れねぇのか。」

「今はもう何もする気になれない……。」

「…っち、仕方ねぇ。」


ため息をつきながら、何やらソファーにしなだれかかる跡部。
…ん?何なに?
なんでこっち見ながらグラビアアイドル顔負けの気持ち悪いポーズをとってるの?


「特別に撮らせてやる。」









…気持ちはすごい嬉しいんだ。

跡部のそういう突然藪から棒に突き出してくる優しさ、好きだよ。

人に撮られるの大好きなんだね、だってすっごく嬉しそう。

きっと跡部が彼氏だったら、毎日思う存分写真を撮れる(撮らされる)んだろうね。



でもね、だけどね







「跡部…ごめん、全然撮りたくない。




ボコッ





「い…ったい!!」

「なんで日吉のは撮れて俺のは撮れねぇんだ。」

「いや…普通に考えてよ。家に帰って、あー今日も一日頑張った!
 さて、私の王子様の写真見て癒されよー☆
って思って携帯開いてさ、
 ドヤ顔の跡部の写真が出てきたら…どう思う?いやでしょ?余計疲れるでしょ?そういうことよ。」

「意味わかんねぇ。」

「……じゃぁさ、こう考えてみて。あんた私の写真撮りたい?」

「まだカブトムシの幼虫でも撮ってた方がましだな。」

「それは言い過ぎだろ!……でもまぁ、そういうことだよ。
 私だって、あんたの写真なんか撮るくらいなら、1枚でも多くぴよちゃんさまにフィルムを使いたいの!
 ぴよちゃんさまの靴下とか撮ってる方が数倍楽しいの!



皆が残念そうな顔で私を見てるのがひしひしと感じられる。
目の前の跡部ですら、私のことを憐みの目で見ている気がする。
別に私の趣味なんだからほっといてよね!あんた達に迷惑かけてないでしょ!


「…やっぱりこの中の誰かと付き合うなんて私には無理だ。」

「は?なんでそんな話になるわけ?」

「…いや、さっき榊先生がさぁ…。」






























「なっんだよそれ!監督、俺達のことなんだと思ってんだよ!」


先ほどの経緯を皆に話したところ

何故か皆、激怒しています。え、なんで激怒?


「俺らがなんかに落ちるほどモテへん、思われてるんやろか。」

「ありえねぇだろ、と…監督何考えてんだよ。」


「や…いや、ありえないことはないよね?だって男子と女子なわけじゃない?」


「もうその話飽きたんだよ。お前が女だとかいう戯言は。」

「いやいやいや飽きたとかじゃないじゃん?事実だからさ、生物学的にさ。」




私の話など耳にもくれず、ついには監督に直訴しに行こうって話まで出ている。

こういう時のこいつらの団結力には目を見張るものがあるよね。




…先生、安心してください。


がテニス部の紅一点なんて思ってる奴は、誰1人いませんでした。