氷帝カンタータ






第2話 ガチンコッ






パコーーンッ



ポコーンッ



ボコッ



いって!ちょ…誰?!私にボール当てたの?!」

「ボーっとしてるからだよ、バーカ。」

「おーし、わかった。お前ちょっとこい、こっちこい。」



テニス部マネージャーとしてこのテニスコートに封印されてから1週間が経ちました。
マネージャーは皆謎の失踪を遂げたとかで誰もいません、この人数に対して私一人。えげつない。えげつないですよ榊先生。
私をこんな地獄に陥れた先生はというと今日も部活に来てません。一体なんだというのでしょうか。イライラがとまらない!あはっ!

さらにはレギュラー部員達に完全に舐められてます。忍足風に言うとなめくさっとる。誰も初心者の私をいたわってくれません。
それどころか、今みたいにボールをぶつけられたり、更衣室が男子と一緒だったり、私だけ置いて皆先に帰ったり…。
酷すぎない?そりゃ皆辞めるわ!!!



「宍戸さん!ダメですよ、人にボールぶつけたら!」

「そうだよね!ちょたはやっぱり天使さまやでぇ…!2年生万歳!2年生以外みーんないなくなーぁれっ☆



バコッ



「っつ…おい次は誰だぁあああ!私の可愛いおしりに当てた奴!

「あーん?手がすべっただだけだ。」

「はっはーん…あんたさては下手くそなのね?だから練習もせずにベンチでふんぞり返るだけの簡単なお仕事しかさせてもらえないのね?」

「……あーん?」

ここ一週間、練習風景をちらちら見てたけど、跡部だけはどうも動いてる様子がない。
動いてるのは樺地だけ。可哀想ったらありゃしない。


「お前誰にモノ言ってんだ?」

「あんたよ、跡部。」

「…あんまり挑発しなやー、。面倒くさいことなるで。」



コソッと忍足に耳打ちされたけどそんなの関係ねぇっ!
大体なんで跡部が部長なわけ?
絶対ちょたとかぴよちゃんさまの方が適任じゃん、可愛いし可愛いし可愛いし…。




「コートに入れ、。」

「だからって馴れ馴れしく呼ぶんじゃないわよ!あんたもいきなりけーたんっ☆って呼ばれたら嫌でしょ?」

「虫唾が走る」

「お…おう、まぁそういうことよ!わかった?」

「いいから、早くしろ。」

くっそ、こいつ日本語通じない。っていうか私テニスできないし。」



なんか跡部って挑発に乗りやすすぎない?
こんな展開になるなんて別に望んでなかったんですけど。
ちょっと目が怖いし。


「ほら、面倒くさいことなったやろ?どうすんねん、死ぬで。

「ええええ!?!テ…テニスって生死に関わるスポーツだったかな?」

ちゃん俺が一緒にやってあげよっか〜?」

「ジロちゃん!え、でも一緒にできるかな?私コートの隅っこで立ってていい?

「だめだC〜!ちゃ〜んと打ち返すんだよ?」


ぎゅうぎゅう抱きつきながらの上目づかいは反則でしょ!
この子は将来どんな大人になるんだろうか…
って、そんなこと言ってる場合じゃなくて…


「跡部、1人じゃなくてもいい?」

「あ〜ん?何人でも一緒だ。早くしろ。」

「よし!氷帝テニス部全員集合ーーーーー!!


何百人コートに入れる気だよ!本当バカ!!」

「じゃあがっくん一緒にやろ?ほら、もうねジロちゃんね、寝ちゃってるから。


本当1秒目を離すと寝てるんだけど、この子。
寝る子は育つんだろうけど、こんなに寝てたら色々退化していくんじゃないかな?
将来この子はきちんと社会に出て働いて稼いでいけるんだろうか…
って。そんなこと言ってる場合じゃなくて…


「おーし!じゃあ特別に組んでやるよ!はコートの隅で寝てればいいから。」

「が…がっくん男らしい!がっくん素敵!王子様!よっ、官房長ー!

「全然意味わかんねぇ。」



とりあえず、がっくんは私が1週間みてきた限りでは…ダブルスが得意ということがわかった。
なんかぽんぽん飛んでた記憶があるから、きっと大丈夫だろう…。





「よーっし!じゃあ私からボール打っていい?」

「どっからでも来いよ。」

!あの枠の中に入れるんだぞ!」

「わかってる!そーーーー……れっ!」


バコッ




いいいってぇえ!ちょ…!!!どこ目掛けて打ってんだよ!」

「ご…ごめん、がっくんもうちょっとコートの隅っこ辺りに立っててくれる?邪魔だわ。

「いやいやいや…じゃあサーブ打った後、跡部からボール返ってきたらどうするつもりだよ!」

「う…受け止める…?」

「無理だよ、馬鹿!あー、もう!とりあえず下から打ってあの枠に入れろって!」

「わ…わかったよ、怒らないでー!」


む…難しいテニス…。あんなところにがっくんがいたら絶対当たっちゃうじゃん。
一週間の知識で得たことと言えば、試合はサーブから始まるということぐらいだしな…。



「そ…そーっれ!」


ポーン


「もらった…!」


バシュッ



「うううううわあああ!」



ポコーンッ



手加減抜きで思いっきりフルスイングしてきやがった…!
大人げない…大人げないよ、あんた初心者相手に!

なんとかラケットに当てるのが精一杯…打ち返せない…!





「おお…当てよったで、ラケットに。」

「なかなかいい動体視力持ってんじゃん。」

「宍戸さんもそう思いました?初心者であれ見えるってすごいですよね。」






「……っ!」


スパーーンッ



「ぃいいやぁああ!顔はやめてぇええ!アイドルなのよぉおお!」



ポコン



「……中々ついてくるじゃねぇか。」




!とりあえずそのまま頑張れ!跡部お前ばっかり狙ってるから!」

「ええええ!ちょっとがっくん助けてよ!このままだと事件になるよ!?」

「…喋る余裕がまだあるとは…っな!!」


バコンッ




「ひぃいいい!」




ポコッ




「……なぁ、やっぱりすごない?」

「あぁ…。もう30分はラリー続けてんぞ。」

ちゃん、ちゃんとコートに入れれてるC〜!俺よりすごいんじゃな〜い?」

「………あの跡部さんの打球を…。」



もう何十分こうしているのだろう。
延々と打ち続ける跡部に対して、ラケットで防ぐことしかできない私…。

これは完全に「かわいがり」じゃん…!
相撲部屋とかで先輩が兄弟弟子に対して行う、いじめみたいな地獄の練習じゃん!
誰も助けてくれないし、がっくんは笑って全然参加してないし、
今日はこの後真子ちゃんと放課後デートの予定だってあるし、早く帰りたいし…


あぁー、もう…



「なんでこんなことしなきゃなんないの……っよぉぉぁあっ!



バコンッ




「「「「「「あ」」」」」」」


























「……完全にふいをつかれましたね。」

「激ダサ。」

「うおおおおおお!すげぇ、が跡部に勝った!!」







「え?」














「………っっ…。」




なんか今ちょっと力入れて打ってみたけど…
跡部の足元にボールが…転がっているということは…?



「か…勝ったの?」

「そうだよ〜!ちゃんすごい〜!」

「なかなかの策士やん、。」

「えっ?え、やばい私部長に勝っちゃった?ふ…ふはは…ははははっはっは!!見たか跡部!私に跪け!!








「………。」

「な…何よ…。」



ずんずんと私に向かって歩いてくる跡部。
何よ、負けたからって怒ってんの?



「もう1回だ。」

「…え?」

「もう1回コートに入れ。」

「い…いやだよ、もう私今日は帰らないと「いいから入れ、命令だ。」




「…あーあ、跡部はしつこいでー。」

ー、付き合ってやれよ。明日また無事で会おう。」

「…ったく…激ダサ。」

先輩、明日会えることを祈ってます。




「ちょちょちょ…ちょっと皆待って…助けてよ!」




「…こうなった跡部さんは誰にも止められません。」

「ぴ…ぴよちゃんさままで…や…やだやだ跡部と2人とかやだぁあああ!


「いいから早くしろ!」








その後、3時間にわたる激闘…もとい「かわいがり」を受けたのでした。





















「おはよー、。昨日どやった?」

「……あんた達絶対恨むからね。」

「まぁまぁ…。跡部にあの後ぼこぼこにされたんやろ?」

「そうよ!私が倒れても打ってきたからねあいつ!しかもさぁ、なんか変なセリフとか言って!」

「変なセリフ…?」

「うん。俺様のうんたらかんたらぁ!みたいなこと言っててさぁ、ああやって笑いとって勝とうとするのずるくない?

「…ぶふっ…なんや、そんな本気なっとったんかいな。よっぽど悔しかったんやろなぁ。」

「もー…、災難だったわよ、本当。」






でも久々にあんなに汗かいたなぁ。
スポーツとか久しぶり。


夕焼けに染まるコートでいじめぬかれた想い出…
ちょっと微妙だけど…



「まぁ…、ちょっとは楽しいかもね。テニス。ふふっ。」

「………気持ち悪っ。」

「はぁああ!?女の子の笑顔を気持ち悪いってどういうことだよ!」





新しい自分発見。