氷帝カンタータ
第4話 鬼さんこちら (前編)
嘘でしょ、どこの国?
昨日の放課後。
「!も明日一緒に行く?」
「ん?どこに?」
「跡部の別荘だよ!俺達皆で遊びに行くんだ。」
「んー、がっくんの家なら行く。」
「何言ってんだよ、なんか一歩も入れたくない。」
「ひ…ひどい…なんか最近がっくん冷たくない?ねぇ、ぴよちゃんさま?」
「…普通の反応だと思いますけど。」
「…ぴよちゃんさまも明日行くの?」
「強制的に行かされるんですよ、レギュラー陣は。」
「じゃあ行く。私も絶対行く。」
跡部の家だろうがなんだろうが、とりあえずぴよちゃんさまのお姿を休日に見られるなんて…
こんなありがたいことはない。
そろそろ部屋にぴよちゃんさまポスターとか飾っちゃいそうな勢いだわ。
「跡部ー!も行くって!」
「あ〜ん?…まぁいい。何人増えようが一緒だ。」
「ねぇねぇがっくん。跡部の家で何すんの?」
「かくれんぼ!」
「跡部の家はで〜っかいからめっちゃたのC〜んだよ!」
「ジローはいっつも寝てるだけだろ。」
「そういう宍戸先輩も、いっつもすぐ見つかるところにいるじゃないですか。」
「うっせ。」
か…かくれんぼ?
しかもなんか定期的に開催されてるっぽいな。
た…楽しそうじゃん…!!!!
「私かくれんぼ大好き!ねぇ、見つけた人が見つかった人のことを1日奴隷にできるっていう制度はどう?」
「……、なんでルール知ってるん?」
「え?」
「このかくれんぼゲームではね〜、1番最後まで逃げ切った人以外は罰ゲームがあるんだよ〜。」
「…どんな罰ゲーム?」
「この前は…俺は…あぁ、思い出したくねぇ。」
「何!?宍戸、何があったの!?」
罰ゲームの話をした途端顔がくもる皆…
何なのよ、どんな過酷なゲームなのよかくれんぼ…
「ち…ちなみに前回の鬼は?」
「俺様だ。」
「こ…今回は?」
「もちろん俺様だ。」
「なん・でや・っねーん☆」
「あ〜ん?俺様の家なんだ、当たり前だろ?」
「いやいやいや、あんたの家だからあんたが1番有利なはずでしょ。そんな人が鬼やったら見つかるに決まってるじゃん。」
「文句あんのかよ。」
「ありありよ!そんなあんたの道楽に付き合ってられるか!私は鬼に立候補するよ!」
何を隠そう、かくれんぼ選手権(小学校の時に町内会で行われた大会)で
ゴッド・オブ・ハンターとして恐れられてた私ですから。
見つけるのは得意なのよね〜!
「…アホやな。跡部の家なんやから跡部の方がいい隠れ場所知ってるに決まってるやん。」
「そうだC〜!ちゃんバカ〜」
「跡部さんが最後に見つかることになれば、俺達全員が罰ゲームなんですよ。」
ぴよちゃんさまの凍てついた視線が怖い…
確かに、その可能性を忘れていたな。
「大丈夫よ、皆!私を信じて。なんていったって私は第16町会の鬼神として恐れられていたんだから。」
「なんだよそのヘボイ称号は。まぁでもが鬼なら今年は安泰だな。」
「…どういうことよ宍戸。」
「鬼が制限時間内に全員見つけられなかった場合は、鬼が1人で罰ゲームだ。」
「っな…ま…まぁいいわ。あんたら1人残らず見つけてあげる!まずは跡部、あんたよ。」
「あ〜ん?俺様に宣戦布告か?」
「1番に見つけてあんたに裸踊りをさせる。」
ブフッ
「あ…跡部が裸踊りって…!!ナイス!絶対見つけろよ!」
「任せてがっくん!がっくんは2番目に見つけて尻文字ダンス全裸バージョンやらせてあげる!」
「はぁ?!絶対ヤダ!!」
「……なぁ、を鬼にしたん間違いちゃう?」
「…何かとんでもない罰ゲームをやらされそうな気がします。」
「ちゃん変態みたいな罰ゲームばっかりだC〜!」
「でもあいつ跡部の家は初めてだろ?圧倒的に不利じゃん。」
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「…嘘でしょ、どこの国?」
「めっちゃ広いやろ、これ全部跡部の敷地や。」
「……跡部がどうしてもって言うなら結婚してあげてもいいっていう気持ちになるわね。」
「お前と結婚するぐらいならこの土地を全部売り払って山に籠った方がましだ。」
「なんだと、跡部。」
目の前に広がる広大な芝生。
その先に見える宮殿みたいな建物。まさかあれが家…?
なんなのよ、これ。
そりゃこんなところで育ったら伸び伸び育つわ。わがままになるのも納得だわ。
ゴチッ
「っつ!な…何すんのよ!」
「お前…今失礼なこと考えてたんじゃねぇだろな、あ〜ん?」
「べ…べべべべべべ別に考えてないし!」
「は嘘が下手やなぁ。」
「おーい!皆早く入ろうぜ!!」
「はやくはやく〜!」
一目散に走っていくがっくんとジロちゃん。
あんな元気なジロちゃん初めて見た私。
皆楽しみで仕方ないんだろうなぁ…こんな地獄みたいなイベントが…。
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「ちょっとこれはお話が違います跡部さん。」
「あ〜ん?お前が鬼やりたいって言ったんだろうが。」
「いや…でもこれはさぁ、さすがに広すぎるじゃん?園内マップとかある?」
「テーマパークじゃねぇんだからあるわけねぇだろ。」
「じゃあどうしろっていうのよ!なんかもう皆一目散に走って隠れに行ったし!」
「制限時間は2時間だ。わかったな。」
「…2時間でも短く感じられるわね、これ。端から端まで歩くので1時間かかるんじゃないの?」
「ちんたらしてたらお前が罰ゲームだぞ。」
「…っく…。」
「お前が負けたら
裸踊りだ。」
「なんでだよ!!私女の子!ゆーあー男の子!性・犯・罪!」
「お前が言いだしっぺだろうが、まぁお前のしょーもない裸踊りでも見てやるから安心しろ。」
「しょーもなくない!youtubeに流したら5000万再生ぐらいいくわ!」
「じゃーな、まぁせいぜい足掻くんだな。」
颯爽と走り去る跡部…。
この大きな屋敷の玄関に取り残された私…。
あかん…かくれんぼなめてました…!
第16町会の5倍はあるじゃん、この敷地。
でも見つけないと裸踊り。
………やるしかないのよ。
(つづく)