とある昼休み。

私は真子ちゃんを含むクラスの女子と
珍しく屋上ランチを楽しんでいた。

うちのクラスは全校生徒の羨望を集める
氷帝テニス部員がいない所為か、
皆とっても私に優しい。というか応援してくれている。
本当にこのクラスで良かったよ…!

地獄の部活が始まるまで、束の間の休息を楽しんでいたその時。
早々にお弁当を食べ終わった華崎さんが携帯をぽちぽちと弄りながら
楽しそうに話をはじめた。



「…はー…、私今幸せなんだぁ。」

「ん?なになに。どうしたの?」

「あー、あんたまた彼氏との惚気話始めるつもり?」

「え…ええええ!華崎さん彼氏いるの!?」

「え、知らなかったんだ。バスケ部の斎藤君だよ。」


あまりの衝撃に食べていたメロンパンを落としてしまった。
マジでかー…えー、いいな、羨ましすぎるんですけど。

なるほど、確かに最近華崎さん可愛くなったもんなー。
嬉しそうに携帯画面を覗く顔とか、ものすごく可愛いよ、恋する乙女って感じで!


「あ、そうだ私いい事考えちゃった。」


お弁当箱を包みながら、ニヤりと笑った真子ちゃんに
その場にいた全員が注目する。


「ほら、この前の罰ゲームの話だよ。」

「あー、私と華崎さんが負けたトランプ対決の話?あんまりひどいのはやめてね!」


そうなのだ。
私達は先日お昼休み中にトランプ遊びに勤しんでいた。
その日は生憎の雨だったので、なんとか教室で遊ぶしかなかった。

普通にゲームをするのも楽しくないから
罰ゲームを設けようと提案したのは、他でもないこの真子ちゃん。

真子ちゃんってば、自分が絶対負けない自信があるからって
そんな小悪魔的なこと言いだすんだもんなー、可愛いよねー。

そして、あっさり負けたのは私と、この幸せ絶頂女の華崎さん。
その罰ゲームを何するかの話をしている時に、丁度昼休み終了のチャイムが鳴り
今日の今日までその話は保留にされていたのだ。


「ふふふ…昨日ネット見てたんだけどさ。」

「うん…何、真子ちゃんの顔が怖いんだけど。」

「≪恋人に「大好き」ってメールを送って返信を発表しよう≫みたいな話題が面白くってさ。」


自分の携帯を弄りながら、そのページを私達に見せる真子ちゃん。


「これにしようよ。面白そうじゃん?」

「え…えー!え、じゃあ私が斎藤君に…だ、大好きってメール送るの!?」

「……真子ちゃん、それは新手の嫌がらせですか。わた…私誰に送ればいいの…!真子ちゃんに送ればいいのかな!」


だって…だって華崎さんはいいよ!
愛しのダーリンがいるじゃない!だけど、私のこと忘れてない!?
恋人はおろか、好きな人だっていないような枯れ葉系女子なんだよ!?中学生にして!



は、テニス部員に送ること。」

「飛び降りるよ…、真子ちゃん私ここから飛び降りるよ!?」

「だーいじょうぶだって!ねぇ、皆面白そうだよね?」

「うんうん、この子が斎藤君に送るのよりよっぽど面白そうー!」

「えー、ちょっとそれどういうことよ!」


プリプリと怒る華崎さんに、真子ちゃんが「だって大体返信予想できるもんね。」と付け加えた。
うん、確かに。きっと「俺も大好きだよ」とか返ってくるんじゃないですか。
くっそ、いいな…!私も…私も恋人がいれば…!!


「フフ…えー、エヘヘそうかな?じゃあ私送ってみるね!」

「はいはい。ほら、も早く送りなよ。」

「ちょ…ま…下手すると私の命の灯が危ないかもしれないんだよ!?それでも送るの!?」

「…罰ゲームは絶対…、って教えてくれたのだよね?」


アカン、真子ちゃんの目が怖い…!
いや…でも、「大好き」なんて…送れる相手がいないんだもん…!

携帯を握りしめながら脳内をフル回転させていると、
早速華崎さんの携帯の能天気な着信音が鳴り響いた。


「……う…わー。」

「え!?何なに、ちょっと見せて!」


顔を覆い、真っ赤になった華崎さんから強引に携帯を奪い取ると
画面に表示されていた文章は、もう…ごちそうさまって感じのラブラブな文面で。


「…この幸せ者ー!」

「えへへー!」

「さ!次はの番だよ?」


全員の期待に満ちた視線にあらがえるはずもなく…。


私は意を決して、メールの宛先を指定した。

































PLLLLL……



「あっ!!ほら、携帯鳴ってるよ?!」

「……はー…。開くのが怖い。」

「何言ってんの、早く見せてー!」







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