迷走ユートピア
番外編(5)
「ねぇ、がっくん。私思ったんだけどさー。」
「なんだよ、今ジョジョ読んでるから静かにして。」
「もー、何回読んでんのよそれ。」
「仕方ないよ、ジョジョは面白いんだもんねー。」
合宿所に今日も夜がやってきた。
1人部屋の寂しさに耐えきれない私は
今日も、がっくんにジロちゃん、忍足が集まる部屋で暇を持てあましていた。
ベッドに寝転がるがっくんは漫画に夢中。
二段ベッドの上には恐らく忍足がいるんだろうけど、寝ているのかなんなのか姿を見せない。
そして、テレビの前のソファで座る私の隣にいるのは眠たげな表情のジロちゃん。
1人が寂しいから来てるのにこれじゃ1人も同然だよ!
ということで、話題を提供しようとしたのに先程の仕打ち。
しかし、そんなことでめげる私ではない。
「あのね、氷帝にはなんでデータマンがいないんだろう。」
「えー、そう言われてみればそうだねー。」
「でしょ?青学には乾君、立海には柳君がいるのにさ…これじゃ氷帝だけアホの学校みたいじゃん!」
「別にんなことねーだろ。」
「そんなことあるよ!やたらと個性の強いメンバーばっかりだし…。青学には大石君とかタカさんとかいるよ?」
「…うちにだっておるやん、日吉とか鳳とか。」
急に話しに入ってきた忍足はやっぱり起きていたようだ。
二段ベッドの上からちらりと顔を覗かせて反論してくる。
相変わらずがっくんは漫画を読みながら適当な返事。
隣のジロちゃんはそろそろ眠すぎてこちらに倒れ込んできそうな予感。
「いや、私は3年生の話をしてるんだよ。2年生はどこの学校も可愛い子ばっかりじゃん。」
「俺だって十分可愛いですー。」
「確かにがっくんは可愛い。可愛いよ、だけど自分が乾君や柳君と同い年っていう事実についてどう思う!?」
「………うわ、なんかそれすげぇ違和感。あんなに老けてねぇし。」
「でしょ?氷帝には圧倒的に大人っぽさと落ち着きが足りない気がするのよ…。」
「え〜、でもでも忍足とか結構大人っぽくない?」
「せやで、このクールな感じは他の学校にはあらへんやろ。」
本格的に起き上がった忍足が、ベッドから降りてくる。
私達の後ろでぐいっと屈伸をひとつして、がっくんの枕元から漫画を1冊取った。
その様子を見つめながら、私はわざとらしくため息をつく。
「クールっていうのはね、手塚君みたいなことを言うのよ。そんな関西弁丸出しでクールもへったくれもないじゃん。」
「いやいや、俺心閉ざせるんやで。めっちゃクールやん?」
「もうその発言がクールじゃないんだよね。ってうわっ…。あー、寝ちゃったジロちゃん。」
案の定急に膝元に倒れ込んできたジロちゃんはぐっすり寝ている。
いつものこととはいえ、自分の膝枕の上ですやすや眠るその寝顔に、きゅんきゅんしてしまう。
「…何ニヤニヤしてんねん、キモイな。」
「しっ!ジロちゃんが起きたらどうすんの、もう少しこのフィーバータイムを味わわせてよ。」
「……っていうか、がそこまで言うんやったら言わせてもらうけどな…。」
「な、何よ…。」
「俺だってこの合宿に来て、氷帝に足りんもんを痛感したんや。それはもう哀しいぐらいにな。」
「へー、何?」
「……………可愛いマネージャーや。」
「……あ?」
ジロちゃんを起こさないように激しい睨みあいを続ける私達。
鋭い視線の忍足に、つい闘争心むき出しにしてしまう私に、眠るジロちゃん。
がっくんも空気が変わったことに気付いたのか、漫画を置いてこちらを覗いている。
「なんやねん、あ?って…。どこのチンピラやねん…。」
「急に喧嘩売ってくるからじゃない。」
「…練習が終わったらお疲れ様ですっ、先輩っなんて言ってくれる可愛らしいマネージャーがおったら…」
「あいつら可愛いよなー、ドリンク渡す時とか一々緊張してたりして初々しいっていうか…。」
「せや。あの溢れ出る女の子オーラが足りへんねん。」
「そ、そんなの…璃莉ちゃんと里香ちゃんは後輩だから緊張してるだけじゃん!」
「いーや、ちゃう。仕草とかが全然ちゃう。璃莉ちゃんはウォーターサーバー持つ時も両手で頑張って持ってなぁ。
うんしょっうんしょっみたいな効果音が聞こえてきそうなぐらい可愛い運び方しとる。」
「ぎゃははっ、はサーバーなんかまとめて2つ運べるもんな!しかも早歩きで!」
「…貴様達…、それ以上言ったら…。」
「あとな、反応が可愛いねん。」
「何だよ、反応って。」
「例えば俺がそのカゴ重いやろ、持ったろか…って言うたら里香ちゃんは素直に≪ありがとうございます!≫って言いよる。
さらに、≪忍足先輩優しいですね!≫なんて嬉しいオマケつきや。完璧や、100点満点の返しや。」
瞳を閉じて、当時の光景を思い返しているのかうっすら微笑む忍足。
私が言うのもなんだけど、気持ち悪いなこいつなんて思っていると
カッと目を見開きこちらを睨みだした。
「それがどうや…。俺が同じことに言うたとき…お前何て返したか覚えてるか?」
「…そんなの言われたことあったっけ?」
「あるわ!俺の紳士的な優しさに対してお前は…、≪何なの?何が目的なの、斡旋?女の子を紹介して欲しいの?お断りよ!≫
…こんなこと言うたんや。人を疑う汚い心の持ち主なんや。」
「ぶっ、ちが…違うじゃん!それは忍足が普段言わないようなこと急に言うからでしょ!」
「うわー、ひでーー。侑士の優しさを無碍にしたんだなー。」
「何その棒読み。がっくんもう飽きちゃったの?この話。」
「岳人も欲しい言うてたやんな、可愛いマネージャー。」
「まぁなー。なんつーか、ちょっと練習中もカッコつけたりしちゃうよな。」
「嘘でしょがっくん…!可愛い女の子に見られてカッコつけちゃうがっくんとか超可愛い、私も見たかった!」
「…はいっそのこともうしゃべらない方がいいんじゃね?」
呆れた顔でこちらを見つめるがっくんに、忍足。
くっそ…こんな展開になることを誰が予想できたでしょうか…。
そりゃあんな可愛い子達と比べられたら惨敗に決まってるじゃないか…!
仕草とか反応云々の話じゃないよ、素材の問題だよ…!
でも、でもまだ私には味方が1人いる。
この狭い密閉空間で2VS2なら…まだ勝機はある!
「ふ、ふーんだ。いいもん、ジロちゃんはマネージャーとしての私を愛してくれてるはずだから。」
「…あ、そういえばジローも言ってたな。」
「ちょ…何よ、がっくん…。言っとくけど、私のHPは限りなく0に近いからね、今。あまり刺激しないでね。」
「いつだったかなー、練習中にいつものノリでジローが西郷に抱きついた時の話なんだけど。」
「なに!?ジローの奴…こいついつの間にそんな羨ましいこと…。」
「西郷の奴、全身真っ赤にして≪ひゃ…や、やめてください!≫とか言ってさ。」
「そりゃそうでしょ…。よく知りもしない他校の先輩に抱きつかれたら…警察沙汰になってもおかしくないよ。」
「でもその反応が新鮮だったらしくて、璃莉ちゃんかわE〜!とか言ってたぜ。」
「はい終わった!もう私の最後の希望も断ち切られた、実家に帰らせていただきます!!」
くぅっ…!確かに…確かに、話しを聞いてるだけでも可愛い里香ちゃんと璃莉ちゃんの姿が想像できる…!
自分に足りないのは女子力だと、常々言い聞かされてきたけど…
ここまで自分とあの2人に超えられない格差の壁があっただなんて…!!
勢いよく立ちあがった私の膝から転げ落ちたジロちゃんは、
驚異的な睡眠欲からか、全く起きずに床でぐっすり眠っていた。
立ちあがって泣き真似をしながら部屋を後にした私をゲラゲラと笑う悪魔2人。
ちくしょう…!ちくしょうちくしょう!
・
・
・
「私だって…私だってちょっと本気だせば出来るんだから…。」
当てもなく飛び出した廊下。
取り合えずヤケジュースだ!ということで、自販機の前で呑んだくれる。
まだ冷たいオレンジジュースをグイっと男らしく一気に飲み干したその時。
ポンポンと肩を叩かれたので振り向いてみると
「ぶふぉっ!ふ…ふふふふ不二君…!」
「やぁ。よく会うね、フフ。」
「そ、その節はどうも…。どうしたの?あ、飲み物買いに来たに決まってるよね、ごめん!」
「さんこそ、今日は何があったの?」
「いえ…こんな大したことない話で不二君の貴重なお時間をいただく訳には…。」
にっこり微笑みながら隣に座る不二君に、つい身体が強張ってしまう。
うわあああ緊張する。大丈夫かな、さっき振り向いた瞬間びっくりして
オレンジジュース噴出しちゃったけど、うわっきたねっこいつとか思われてないかな。
いや、絶対思われてるよねヤダ恥ずかしい、穴があれば入りたい…!
「そんなこと言わずに、少し付き合ってほしいな。」
「つっつきあ…っ、は、はい!是非!喜んで!」
「…ッ、フフ、うん。話してみて?」
「話し…あ、ああ!はい、そういう…ごめんなさい、おこがましい妄想をしましたすいません!」
「さんってよく変わってるって言われない?」
首を傾けて、まるで子供を扱うように優しく語りかけてくれる不二君に
目がグルグル回る。ヤバイ…何この破壊力ヤバイ…。
次の言葉を上手く発せずにいたところに、とんでもなく空気の読めない横やりが入った。
「あ!こんなとこにいた、ちゃん!」
「自分出ていくんやったらドアしめていけや。」
「お、ジュース買おうぜジュース!、お金!」
「やぁ、みんな。」
「あ、不二?何してんだよこんなところで。」
「偶然さんに会ってね。」
「あんた達…。よくも私のハイパーヒーリングタイムをぶち破ってくれたわね…。」
先程の3人が追いかけて来ていたのだ。
今の…今の私にはあんた達なんか必要ないもん!
可愛い女の子にデレデレしちゃって…!私は大いに拗ねてるんだぞ、この野郎!
「不二、危ねぇぞ。あんまりと2人っきりとかになると…。」
「腹筋の写真撮っていい?うへへへへ、とか言われちゃうよ〜。」
「い、いいい言わないから!ちょっと、変なこと言うのやめてよ!」
「生粋の変態やからな、は。不二なんか格好の獲物やで。」
「忍足、あんた私が不二君の前だったら何もしないと思って…い、いい加減にしなさいよ…」
「……さん、やっぱり仲間の前だと楽しそうだね。」
ガヤガヤと五月蝿い中でも、透き通る不二君の綺麗な声。
後ろを振り返ると優しげな表情で微笑む不二君が。綺麗すぎて心臓が止まりそう。
「いやいや、ゴメンね不二君。こんな五月蝿いの嫌だよね。」
「あ、てめー。お前も共犯だろー!」
「ち、ちがうもん!もう放っといてよ!」
「一々拗ねんなよなー、めんどくさい。」
「何があったの?」
「あのね〜、氷帝には可愛い女の子が足りないね、って話ししてたんだって!」
「青学の西郷は女子ーって感じで可愛いじゃん?」
「対して氷帝にはなんでこんな凶暴なマネージャーしかおらんねや…って憂いてたんや。」
「てめぇら…!よ、よくもこの状況で、このタイミングで知られたくないことを…!!」
「…僕は、さんも十分女の子っぽいと思うけどな。」
「…へ…。」
「不二、お前はなんて優しい奴なんや…。」
「フフ、別にお世辞じゃないよ?……あ、さんちょっとそのままジっとしててね。」
「え…っえ、え!」
そう言うと、私の顔をじっと見つめながら
不二君が段々と近づいてきた。……ちかっ、近いな!!
そして私の頬に白魚のように綺麗な手をそっと添え、
じっと私を見つめる王子様。
え…っ、え何してるんだろう。
綺麗な瞳に吸い込まれそうなのが怖くて、思わずギュッと目をつぶると
もう一方の手が右目のすぐ下に触れた。
そして夢のような時間から解放された時。
恐る恐る目を開けると、にっこり微笑む不二君が。
「紙くず、ついてたから。ごめんね、いきなり触って。」
「…………っっ!」
「…さん?」
「…っあ…ありが…と…。」
爆発しそう。
よく、爆発しそうって思うけど、今回は本気で頭が吹き飛ぶかと思った。
今きっと私とんでもなく気持ち悪い表情だと思う。
不二君に触れられたということが恥ずかしくて、意識しすぎてうっすら汗とかかいてる気がする。
周りの状況なんて一切見えなくなるぐらい緊張してしまった私は
何とかお礼を告げたものの、どうしていいかわからず…
気付いた時にはその場から必死に走り去っていた。
……今まで…今まで生きてきて本当に良かった!!
「…つかさー。さっきの…。」
「めちゃくちゃ顔真っ赤にしてたねー。初めてみた、あんなちゃん。」
「あんな表情出来るんやったら、いつもああしとったらええのにな。」
が走り去った後、不二とも別れ部屋に戻る途中の3人。
その話題は先程のマネージャーの奇行についてだった。
「なんか…なんかくやC〜!超女の子だったじゃん!」
「不二相手だったら、全然女子だな。…なんだろうな、この微妙にイラっとする感じは。」
「…は美形に弱いからなぁ。」
「いや、てかさ。あの不二の行動がやたらとイケメンだったじゃん?」
「そうそう!普通顔についたゴミとるだけであんな手添えたりしないC〜。」
「あのの、あるかどうかも微妙な女子力を引き出すとは…結構やるやん、不二。」
「「「…………。」」」
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「おーっす、おはよ。」
「あ、がっくんおはよー。今日の朝ご飯の味噌汁ね、長ネギだよー。やったね!」
「おう。」
「がっくん長ネギ好きじゃん?テンション低くない?」
「別に低くねぇし。…あ、ちょっと。じっとしろ。」
「ん?」
朝だからなのか、微妙にテンションの低いがっくん。
朝食会場で私の隣にトレーを置いたがっくんが、急に手を伸ばし
そっと私の後頭部を支えるようにしたので何事かと思うと
もう片方の手でスっと髪の毛を撫でるように触られた。
「……ゴミついてた。」
「ありがとー。さ、食べよっか!いただきまーんもす!」
「…………つまんね。」
「えー、いっつもがっくんも言ってるじゃん!さぁ、早くいただきまんもす!」
「そっちじゃねーし。」
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「ジーローちゃん、もう午後の練習始まるよー。起きなさーい。」
午前の練習が終わり、いつものようにコート近くの大きな木の下で
居眠りをするジロちゃん。昨日は午後の練習に遅刻して跡部に激ギレされて凹んでたっていうのに…
また寝てるんだもんなぁ、起こしに来てよかった。
「んー……あとちょっとー……。」
「ダメだよー、また普段ジロちゃんに怒らない跡部に怒られてジロちゃん泣いちゃうでしょー。」
「……跡部怖い……うう…。」
「おっ、いい感じ。このまま一気に…。ジロちゃーーーん!起きてーーー!!」
「…んー…んあ…あ、ちゃん…おはよー…。」
よし、今日はナイスタイミングだった。
普段よりすんなり起きてくれたジロちゃんを、このままの勢いで担ぎあげようとすると
不意に腕が引っ張られ、足をすべらせた私はその場に倒れ込んでしまった。
「いでっ…。こら、ジロちゃん、起きないと本当に遅れるからね。」
「ねぇ、ちゃん。ちょっとじっとしててー。」
「ん、何?」
まだ寝ぼけているのか、ゆるゆると腕をこちらに近づけてきたジロちゃん。
その手は私の左頬にゆっくりと添えられ、もう片方の手は
おでこの辺りに向かってきた。
「これで大丈夫ー、ゴミがついてたよー。」
「ああ、ありがと。なんか今日朝もゴミがついてるとか言われたなー。」
「……あれー?」
「ん?どしたの?」
「………ちゃん、恥ずかしくないの?」
「え、なんで?」
「…むーーーー。なんで?」
「いや…え?…あ、寝ぼけてるのかな、ジロちゃん。よしよし、早く跡部のとこ言って怒鳴り起こしてもらおうねー。」
「ちーがーうー!!」
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「おう、お疲れ。」
「お疲れー。あ、忍足は杏仁豆腐選んだんだ。私はよもぎ団子ー。」
「結構迷ってんけどな。よっこらせ。」
「うわー、おっさんじゃん、いよいよ。まだ若いのに…よっこらせって。」
「やかましわ。」
あっという間に晩御飯の時間。
いつものメインディッシュに加えて今日は小鉢付きだった。
杏仁豆腐とよもぎ団子のチョイスを迫られ、
ショーケースの前でうんうん唸っていた私に
跡部が膝蹴りをかましたところで、一悶着あったのだけど
あまり悩みすぎていると並んでいる他の子にも迷惑がかかると気付かされ
無事よもぎ団子に心を決める事が出来た。
そして今隣にやってきた忍足が選んだのはもう一方の杏仁豆腐。
……そうだ、悪魔的に閃いたぞ!
一口貰ってやろう…。なんとか言いくるめて…よし!
「ねぇねぇ、忍足。ものは相談なんだけどさ…。」
「…ちょっとそのまま動きなや。」
「へ?」
忍足に話しかけながらも、杏仁豆腐ばかり見ていた私は気付かなかった。
いつの間にか忍足の手が、私の耳元を覆うように添えられていたことに。
ゾワっと一瞬で全身に鳥肌がたつ。
驚いて忍足の方を見ると、もう片方の手が私の目元に一直線に向かっていた。
「まつ毛がついヘブッ!!…っ、何すんねん!!」
「あ、あああああんた今…私に目潰ししようとしたでしょ!いきなりは駄目!」
「はぁ?!」
「いくら杏仁豆腐を渡したくないからって、いっいいいきなり目潰しは反則でしょ!」
「なんで今の流れで目潰しやと思うねん!っつー…クロス・カウンター綺麗にきめてくんなや…。」
「た、確かにちょっと綺麗にはいりすぎて申し訳ないけど…だけど…目潰しじゃないなら何しようとしたのよ!」
「……何もないわ。あと杏仁豆腐は一口もやらんからな。」
「っく…交渉決裂か…!先に挑発してきたのは忍足なのに…理不尽だ…。」
「…………ほんまウザイわー。」
「何なのよ!いりません、いりませんよーだ!ちょたに貰うからいいですー!」
「………はいはい。俺以外みんなよもぎ団子やけどな。」
「…くっそー!!」
・
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・
「俺、やっぱり里香ちゃんとか璃莉ちゃんがええわ。」
「……同じことあいつらにしてたら、絶対もっと良い反応返してくれてたよなー。」
「そうだよ!俺達が不二君より劣ってるとかじゃなくて〜、ちゃんがおかしいんだよ絶対!」
「…恥ずかしいの我慢してやったのに、普通にケロっとしてるし。」
「俺なんか寝ぼけてるって思われたんだよー、くやC〜!」
「普通あんな一瞬の判断で、クロス・カウンター決めるか?どんな綺麗な右フックやねん。」
今夜も部屋に集まった3人が不機嫌な愚痴をこぼしていたことは誰も知らない。