御題9:買い食い




ー、一緒に帰ろうぜ。」

「おっけー。ちょっと待ってね、今片付ける。」



部活終わりの部室に2人っきり。
一緒に帰る約束なんかしちゃったりして、なんか今…

私、青春してない?!



「……何ニヤついてんだよ、気持ち悪い。」

「え?えへへ?いやー…なんか私とがっくん恋人っぽくない?このシチュエーション。」

。」

「ん?」

「今度そんなこと言ったら、女でも殴るから。」

「なんでや!!なんでそんな酷いこと言うのがっくん!」

「もー、いいから早くしろってー!」



面倒くさい、と言いたげな顔で催促するがっくん。
テニス部員にトキメキを求めた私がバカでした…!























「なぁ、…。」

「ん?どうしたの?おしっこ行きたい?」

ちげぇよ!あ…あのさ、お腹空いてない?」

「んー…まぁちょっと空いてるかも。」

「だろ!?あ、あそこ入ってみねぇ?」



目をキラキラさせながらがっくんが指差した方向にあったのは…




「……ミルキーカフェ?」

「お…おう!なんかあそこのさ、パフェおいしそうじゃね?」

「………。」

「なっなんだよ!」

「さては、アレが目当てで一緒に帰ろうなんて言ったんでしょ。」

「ち…ちげぇよ、たまたま見つけたから…。」

「どうせ、男同士では入りづらいけど、あのパフェがどうしても食べたかったんでしょ!」

「………うん。」




か……かか…かわいすぎる!!
何この子、こんな可愛らしい中学生男子がいていいのか!?
パフェを食べるためにこんな回りくどい小芝居をする中学生男子!



「…入ろっか。」

「まじで?!やった!」

「その代わりがっくんの奢りねー。」

「っぐ……まぁ仕方ねぇか。」





















店内は99%が女子。

こりゃ、入りづらいわ。


「侑士誘おうと思ったんだけどさー…」

絶対やめなよ。忍足とがっくんが2人でこんなとこ入ってきたら、店内ざわつくよ?」

「だよなー。男だけじゃ入れねぇよこんなとこ。」

「でもさ、がっくん気づいてる?」

「何?」

「今、私達絶対カップルと思われてるよ?」





ごく当然のことを言ったんだけど…



なんでそんな青ざめるんだ、おい。



「や…やばい、絶対ヤダ。

「なっ、いいじゃん!別に!そんなに私のこと嫌い?」

「嫌い…とかじゃないけど、なんか…なんか恥ずかしい!」

「恥ずかしくない恥ずかしくない!だってほら、こんなとこ誰もこな……」







そう言って、




店内を見渡した時、







フと、店外に目線をうつすと……














ガラス越しに青ざめている

















宍戸が見えた。












「…が…がっくん、アレ…。」

「んー…?って…うううううわあぁぁあああ宍戸ぉぉぁぁあ!

「み…見られてるよね!?こっち見てるよね!?」




明らかにぷるぷる身体が震えている宍戸。

笑いをこらえているのか、涙まで出そうな顔になってる。



「や…やばい、誤解されてるよ絶対!」

「お…俺行ってくる!!」




がっくんが立ちあがったときには、もう既に宍戸の姿はそこになかった。
崩れ落ちるがっくん、何故か急に恥ずかしくなりだした私。


結局2人で1つ頼んだストロベリー☆マジカルパフェの味もわからないまま帰ったのだった。

























「おい、。てめぇ昨日部活の後どこ行ってやがった。」

「……ミルキーカフェ。」


ブフゥッ


一斉に吹き出すレギュラー陣。


穴があれば全力で飛び込みたい…!


「ひぃーっ!!岳人と…が…ミルキーカフェて!」

「ふふ…忍足先輩笑いすぎです…よブフッ

「な…何がおかしいのー!私とがっくんがカフェに行ったっていいでしょ!」

「いや…別にいいけどさ…2人のあの…楽しそうな顔を思い出すと…ブフフッ

「宍戸、あんたのせいで今日がっくん休んでるんだからね!」

「よっぽど恥ずかしかったんやろなぁ、と一緒におるの見られんのが。」




そう、がっくんは今日学校を休んだ。


どんだけメンタル弱いのよ!っていうかそんなショック受けることでもないでしょ!



もう絶対カフェなんて行ってあげない!!