御題5:中庭でサッカー
「いけ!シュートッ!」
「ナイッシュ!宍戸ー!」
お昼の休憩が終わって、真子ちゃんとのお弁当タイムが終了。
いつもはそのまま教室で2人で色んなことを話すいちゃいちゃタイムがやってくるのだけど、
今日はソフトボール部の会議があるとかで、真子ちゃんはさっさと行ってしまった。
1人になってしまった私は、なんとなく自動販売機で紙パックのミルクティーを買いに行った。
その帰りにフと、廊下の中庭に面した窓を覗いてみるとお馴染みの面々がサッカーをしているではないか。
こんな暑い日によく外で遊べるよねぇ…。
ジューっとミルクティーを飲みながら、窓際に肘をついてしばらく眺めていた。
がっくんに宍戸に…後は知らない子達だな。クラスメイトかな?
いいなぁ、楽しそうで。汗と笑顔がはじけ飛ぶがっくんや宍戸を見て、そんなことを思った。
「やっぱり、宍戸君素敵!」
「向日君も超可愛すぎだよねー!」
そんな声が隣から聞こえてきたので、目線を向けると
ロの字型の校舎の中庭に面しているほぼ全部の窓から、そのサッカーは女子に見守られていた。
…すご、やっぱり宍戸とがっくんだけでも、人気はあるのね…。
また、純粋にサッカーの様子を見守るのが楽しいのか、多数の男子も観戦しているようだった。
「…おい、あれじゃね?」
「あ、本当だ。おーーーーーい!」
あ、気づかれたっぽい。
宍戸とがっくんがこちらを見つめて、大きく手を振ってる。
軽く手を振り返すと、大きく手招きされてしまった。
「もこいよ!サッカーしようぜ!」
「早くおりてこーーーい!」
少年漫画連載でも始まりそうなセリフを言われてしまっては行かない訳にはいかない。
サッカー…うーん、小学校の体育の時間にちょっとだけやったことある。
とりあえず、周りの女子からの鋭い視線を受けながら(これは慣れっこ)階段を降りた。
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「お、来たな。お前ゴールキーパーな!」
「なんで決定事項なのよ!やだ、怖いもん。」
「まーったまた。お前、跡部のスマッシュ毎日くらってるから大丈夫だって。」
「いやいや、テニスボールは小さいから避けれるけどサッカーボールでかいもん!」
中庭に出てみると、あっという間に宍戸・がっくん率いるサッカーチームに取り囲まれてしまった。
初めて見たその他の男子に軽く会釈をして輪に入ると、急遽ゴールキーパーを言い渡されたというわけだ。
「宍戸…さすがに女子にゴールキーパーさせるのは可哀想なんじゃ…。」
「大丈夫だって!佐藤は知らないかもしれないけど、こいつ片手でテニスボール握りつぶせるぐらい強いから!」
「そ…そんなことしたことないじゃん!ちょっと変な先入観与えるのやめてよ!」
「そっかぁ、さんって見かけによらずタフなんだね。」
「そうだぜ、はタフもタフ。最強のタフガイなんだぜ!」
タフガイ---疲れを知らない、たくましい男。精力的な男。-国語辞書(大辞泉)
…終わった。こうして今日もありもしない噂が広まっていく…。
宍戸とがっくん以外の男子はキラキラした顔で私のこと見つめてるし…
やっぱりがっくんと宍戸と友達っていうぐらいだから皆おバカさんなのかな?
タフガイならゴールを任せられると安心したのか、皆コートに散って行ってしまった。
仕方なくコートの前に立つと、この中庭を見つめてる人間がよく見える。
うわー…緊張するな…。ただの昼休みの遊びがこんなに注目されるって…。
ピーッ
審判役の男の子が吹いた笛を合図に、ゲームがスタートした。
っていうかよく考えるとゴールキーパーなんてやったことないんだけど…
と…とりあえず蹴られた球を止めればいいのよね?
ゴール前でおろおろしていると、あっという間に目の前にゴールを蹴りながら迫りくる男子が。
「…さんごめんっ!」
バシュウッ
「うぉあ!」
バチンッ
「……す…すげぇ、!!」
「あの川口のシュートを止めたぞ!」
「あ…あれ…俺、今手加減してないんだけどな…。」
「い…イタイっ!手がめっちゃ痛いんだけど、川口君!」
初めて名前を知った男の子は、がっくんの話によるとどうやらサッカー部所属らしい。
どおりでこんなに球が重いわけだよ…鉄球投げられたみたいな痛さだったよ…
「だーから、川口!は規格外の女なんだから手加減しちゃだめだって!」
「わ…わかった。」
「ちょ…もういいでしょー!ゴールキーパー代わってよ宍戸!」
「俺が華麗にシュート決めるまでは代わらねぇよー。」
っく…なんかギャラリーから拍手は起こるし辞めるに辞めれないじゃないの、このサッカー…
でもまたあんな球が飛んでくるかと思うと…やだなー。
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「…っくそ、なんで決まらないんだよ!」
私にはゴールキーパーの素質があるのかもしれない…。
それとも、やっぱり毎日跡部にテニスボールを毎日ぶつけられそうになってるからかな?
某ボクシング親子も真っ青の地獄の特訓だからね。私めがけてスマッシュしてくるんですよ。
そんなことをボーっと考えていると、いつのまにか目の前に宍戸。
「隙ありぃぃいい!」
バシュッ
「ちょ…抜かせるかーー!」
ボールは私の右側へと放たれた。
変に責任感の強い私は、ここでゴールを決められては絶対駄目だと思い
ガッツあふれる横跳びでボールにしがみつこうとしたのだけれど
一歩届かず、ボールはゴールへと吸い込まれてしまった。
ズザァッと地面にめり込むぐらいのジャンプをしてしまったため
私は今、地面にべったり倒れている。
「…ぶっ…ちょ…おま…!」
「うー…痛い…くっそー…。」
「さん…!あ…あの、」
「あ、ごめんね佐藤君。ゴールいれられちゃった。」
「そ…そんなことより、あの…。」
「!お前パンツ丸見え!!」
がっくんの大きな声が中庭を囲む校舎全体に響きわたったかと思うと
女の子と男の子の声が混じった大爆笑の声が聞こえてきた。
「っな…!」
急いで体勢を立て直してみるも…100人以上にこの無様な姿を見られたかと思うと…!
「も…もうお嫁にいけない!」
いてもたってもいられず、私は中庭から逃げ出した。
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「、欲求不満なんか?」
「は?」
「いや、紫のパンツて「見てたのかぁああ!」
「あ…あの、先輩…俺も見てました…。」
「………わかってるよね?ちょた。」
「…え?」
「私の初めてを奪ったんだから、結婚するのが男の義務よね?」
「何が初めてだ、バカ。てめぇのせいでテニス部は笑い物だぞ。」
「うっさいわね、そんなの跡部の寒いセリフの方が笑い物になる原因に決まってんでしょ。」
「…お前ごときが紐パンなんて履いてんじゃねぇよ。」
「あんたも見てんじゃないのよ、ばかあああああ!…あ、でも結婚はしてくれなくて結構だからね。」
「こっちからお断りだ。」
「…あ、あのぴよちゃんさまは今日お昼休み何してた?」
「……図書館にいましたけど。」
そう言って興味なさそうにペットボトルのお茶を飲むぴよちゃんさま。
よ…よかった!図書館は唯一中庭に面してないじゃん!よかった…!
ぴよちゃんさまにあんなはしたない姿見られたら…考えるだけで恐ろしい。
「なになに〜?何の話〜?」
「ジローはどうせ寝とったんやろ。」
「がさー、昼休みに俺と宍戸でサッカーしてるとこに入ってきてパンツ見せつけて行ったんだよ!爆笑だろ?」
「がっくん、その日本語だと私が変態みたいになるから訂正して。」
「えー!ずるい!!俺だってちゃんのパンツみたい!!」
そう言って勢いよく私の目の前にしゃがみこみ、制服のスカートをめくるジロちゃん
「わぁ、ちゃん大胆なパンツだC〜!」
ジロちゃんの後ろで目を見開いたまま飲んでたお茶を噴き出すぴよちゃんさま
嫌なものを見たとでも言わんばかりのしかめっ面をする跡部
携帯のカメラで撮影する忍足に、顔を掌で覆うちょたに樺地
爆笑する宍戸とがっくん………
お母さん
娘は今日もこのバカ野郎達と元気に戦っています