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がっくんの場合






「ねぇ、見てみてがっくんー。」

「なんだよ?」

「この前一緒に海行った時の写真をね、Tシャツにしてみましたー!じゃじゃじゃーん!」

「うっわ、キッモ!やめろよ、脱げ!」

「ちょ…やめ、がっくんやめて!私達まだ高校生なんだよ!」

「気持ち悪い言い方すんなよ!…うわー、本気で引くわ。」


とある昼下がり。
がっくんの部屋でいつものようにダラダラ過ごしています。
付き合い始めて3か月。だけど、中学生の頃から一緒にいるせいか
恋人らしい空気になることなんて一度もありゃしません。

私は…私はこんなにラブビームを送っているというのに…
大バッシングを受けたTシャツは、今日の為にせっせと発注したものなのに…。
仕方なくTシャツの上に羽織っていたパーカーを着直し、そっと隠す。
これ以上この世界一可愛い彼氏の機嫌が悪くなるのは避けたいから。

今だってほら、ベッドに寝転がってそっぽ向いちゃってるし。
仕方ない、秘密兵器を取り出すか。



「……今日、駅前のエクレア買ってきたんだけどなー。」

「マジで!?早く言えよ、それを。食おうぜー。」


驚きの早さでこちらを振り返ったがっくんの目がキラキラしている。
…あぁ、癒される…こんな可愛い子の彼女でいいんでしょうか…。
出来ることならずっとこの笑顔を眺めていたい…

そんな思いが表情から駄々漏れだったのか、がっくんの顔はどんどん呆れ顔に。


「…、キモイ。」

「ちょっとさっきから…可愛い彼女のことキモイキモイ言い過ぎじゃない?」

「可愛くねぇし、彼女じゃねぇし。」

「…え……。」

「……っぶふ、はは!何だよその顔!冗談に決まってんだろー。」

「…びっくりした、私長い夢でも見てたのかと思ったよ。」

「可愛くねぇのは本当だけどな。」


にししと笑いながらエクレアを頬張るがっくん。
……本気で一瞬彼女と思われてなかったのかと思った。心臓がバクバクした。


「…よし、がっくんアレしようアレ。」

「アレってなんだよ。」

「お互いのどこが好きかをリズムに合わせて言うゲーム。」

何だよそのバカみたいなゲーム!
やだ。」

「私は今、ものすごく不安に陥ってるんだよ…もしかしたらがっくんが私と付き合っているのは
 長い期間をかけた壮大な罰ゲームなのかも…とか思ってるんだよ…。」

「……バカじゃん、そんなことよりスマブラしようぜ。」

「もう!ちょっとぐらい乙女心を理解しようとしてよ!」

が乙女心とか超おもしれーんですけどー。」


がさごそとゲームの準備をし始めたがっくんにもう何を言っても通じないだろう。
……何だろう、本当にがっくんって…私のこと彼女と認識してくれているのかな。

…まさか自分でもこんなに乙女な気持ちを持てるだなんて昔は思ってもみなかった。
友達だった時は毎日不安になることなんてなかったのに。…付き合うってなんだろう。

3か月の間に何か進展があったかと真子ちゃんに聞かれた時
「家に入れてもらえるようになった」と答えた時のあの憐みの目が忘れられない。
もちろん「彼氏の部屋」で何かが起こるわけでもなく…
付き合うと何が変わるのかなんて、わからないようなカレカノ生活を送っている。


「ほい、。早くやろうぜ。」

「…うん!今日も負けないからねー。」

「負けたらコンビニダッシュな!」


…でも、この最高の笑顔を独り占め出来ることは素直に嬉しい。
可愛くて仕方ない彼氏にきゅんと胸を締め付けられる。
そんな私を見て、呆れ顔でペチっと彼女の頬を叩くがっくん。


…きっとカレカノの関係なんて人それぞれだよね。
こういう関係があったっていいと思うんだ!




































「あ、あれ向日君じゃない?」

「本当だ!おーい!が……っ、あれ?」

「……誰か来たね。」


お昼の休憩時間。
真子ちゃんと窓際でミルクティーを嗜みながらお話しをしていると
体育館の裏で立ちつくすがっくんを見かけた。
学校の中で会えることなんて中々ないから嬉しくて声をかけようとすると
反対方向からパタパタと走ってくる女の子が。

アレは確か年下の…1年の加納さんだ。
確か園芸部の女の子で…ゆるふわキュートな容姿に私でもきゅんきゅんしてしまう。
そんな子ががっくんと知り合いだなんて、何となく胸がざわつくけど…

ボーっと2人が近づいて行く様子を上から見守っていると
隣にいた真子ちゃんが静かに言葉を発した。


「…告白タイムだね。」

「えええ!…え、なんで?私という彼女がいるのに…?」

「あんた達が付き合ってること、そんなに皆知らないじゃん。」

「だ、だってがっくんが頑なにバレるのを拒否するから…。」

「…それ怒っていいところだと思うけど。」

「ふふ、わかってないなぁ真子ちゃん。そういうのが恥ずかしいお年頃なんだよ、がっくんも。」

「……いつまでもそんなこと言ってられないと思うけどなー。」


ミルクティーをズコっと吸い込んだと同時に
体育館裏へと目線を戻す真子ちゃん。

つられてそちらを見てみると…


ぶふぅっ!ごほっ…ぶふぉ…っちょ…え、ええええ!真子ちゃんアレ…!」

「……抱きついてるね。」

「いやいやいや、ダメじゃん!白昼堂々なんという破廉恥な!」

「最近の若い子はガッツあるねー。向日固まってんじゃん。」

「ど、っどっどどどどどどうしよう真子ちゃん!私のエンジェルがっくんが…!」

「ここから思いっきり叫んで邪魔してやったら?」

「そんなこと出来ないよ!超KYじゃん!」

「…はぁ。って余裕があるのか、ないのか…何なの一体。」


見たくないのに、目が離せない。
小さくて可愛いはずのがっくんの胸にちょこんとおさまるサイズの女の子。
そんな子に抱きつかれて、両手をあげつつも顔を真っ赤にしているがっくん。

そこから動かない2人を見つめていると、大きな大きなチャイムの音が鳴り響いた。
それと同時にゆっくりと離れる2人。
加納さんが走り去った後、その場に頭を抱えて座りこむがっくん。

…何を話したんだろう。

こんなこと中学生の頃から日常茶飯事なはずなのに。
今はどうしてこんなに不安になるんだろう。



































「が、ががががっくん、あのさぁ…。」

「…なんだよ。」



放課後、帰り道。
今日は2人で寄り道する約束をしていた。
昼休みの出来事が頭をよぎって上手く話が出来ない。

目的地のカフェにたどり着くまで、ほぼ無言だった私達。
席に着いたところで意を決して話しかけてみたけど
がっくんはいつも通りで。


「えーと…あのー…あ、今日のお昼休みって何してたのー?」

「…今日?……あー、宍戸とサッカーしてた。」



頭が真っ白になった。


私の乏しい恋愛経験では、彼氏のこの嘘発言が何を意味するのか理解出来ない。
…隠したい?もしかして、これが浮気ってやつなのかな…?

そう言えば勝手にアレは「告白タイム」だと思ってたけど…
もしかして秘密の密会だったのか…?

最初からあの2人は…私に隠れて付き合ってたり?
私と言う第一夫人がいるから、中々大っぴらには会えなくて
仕方なくああして、密会を繰り返しているのだろうか。

そう考えると、あの子がいきなりがっくんに抱きついたことにも説明がつく。
最後にがっくんが頭を抱えていたのもきっと………



「……そ、そっかぁ…。」

「なんだよ、そのスコーン食べないならもらうぞ。」



私のお皿に手を伸ばしスコーンを横取りするがっくん。
いつもなら意地でも取り返す私が動かないことを不審に思ったのか
不思議そうな目でこちらを見つめている。

そんながっくんの目を直視できなくて、私はただ俯くばかり。
ダメだ、何か…何か言わないと…!



「…がっくん、何か私に隠してない?」

「……何も隠してねぇし。なんだよ、いきなり。」

「…た、例えば…他に好きな子が出来たり…。」

「は?」


スコーンを頬張っていたがっくんの顔が真剣な目つきに変わる。
あ、ダメだ。何か不機嫌モード入っちゃいそうな感じだ。


「いや、何となく…ほ、ほら私達って恋人っぽくないしさー…。」

「…そりゃ相手じゃなー。」

「…へ?」

「っていうか、今更そんな恋人っぽくとか言われてもピンとこねぇし。」


苦笑いしながら口元を拭うがっくん。
段々と息苦しくなる。…そ、そうだよね…私なんかが何というか…
彼女づらしてることが恥ずかしいというか…

震える手でアイスティーを飲み干す。
顔が熱くて仕方ない。何だろう、突然恥ずかしくなってきた。

私が彼女になる、なんてこと自体遠い遠い夢だったんだ。きっと。



「そ、そっかぁ…。あ、ゴメンちょっと先に帰るね。」

「ん。帰ろっか。」

「……ゴメン、1人で帰る。」

「え?なんでだよ。ちょっ…おい、!」



トレーそのまま置いてきちゃった、ゴメンねがっくん。





































一度も振り向かずに家まで全力疾走して、その後のことはあまり覚えてないけど
気づくと朝で、制服のまま寝ちゃってた。

慌てて携帯を確認してみたけど、そう言えば今日は土曜日。
メールも着信もない。寂しい携帯を見つめて、もう一度ベッドにダイブした。











お昼すぎ。
取り合えずお風呂に入り、気を紛らわせるために
ゲームを起動した。淡々と敵を倒していくだけのこの作業に段々と心が落ち着いていく。

今まで友達だった分、私達が恋人っぽくなるのは普通よりも難しいのかもしれない。
それに、そんなに恋人らしいことなんてしなくても十分がっくんといる時間は楽しい。
一緒にスマブラして、ゲラゲラ笑って、いつまでも食べ物の取り合いをしているこの関係が
私達にはきっと似合っているんだ。

……もしがっくんが友達に戻りたいって言うなら、きっと私は従うだろう。
友達でも、楽しいから。無理に恋人らしさをがっくんに強要して
昨日みたいに…呆れた顔をさせる方が私は辛い。

きっと、3か月居ても恋人として認識できないような女より、
昨日の…加納さんみたいに一瞬抱きつかれただけでも真っ赤になっちゃうような…
そんな女の子の方がいいんだと思う。がっくんにとっても、私にとっても。

グルグルとそんなことを考えると、また暗くなってきた。




ピーンポーン





そんな思考を断ち切るかのように響いたインターホンの音。
出てみると、そこにいたのはハギーだった。


「あれ?どうしたのハギー。」

「どうしたのって、何度もメールしたんだけど?」

「え、ごめん見てなかった!」

「やっぱり。…ちょうど近くに寄ったから。コレ、食べたがってたでしょ?」

「あ!チーズケーキ!え、私のために買ってきてくれたの?」

「…なんかそういう言われ方するとムカついてきた。」

「相変わらずハギーは清々しいほど素直だね!上がって上がって!」


久しぶりに会えたのが嬉しくて先程までの暗い気分が吹き飛ぶ。
ソファに座ってもらって、キッチンで紅茶の用意をしていると



「…で、最近どうなの。向日とは。」

「えー…えへへー…。」

「何それ、ウザ。幸せそうで良かったね。」

「……うん、でもわかんないや。」

「…なに。っていうか折角の土曜日なのにゴメン、もしかしてデートだった?」

「いや。…もういいじゃん、この話は!早くチーズケーキ食べよー!」

「…はぁ、別にそんな無理に元気ださなくてもいいよ。何があったの?聞いてあげる。」

「………本当相変わらずハギーは氷帝の母だよね…。」


腕を組みながら面倒くさそうにそう言うハギー。
昔から何でもお見通しだなぁ…。
誰にも話せなかった昨日のモヤモヤを話すと、
なんだか少し心が軽くなった。
…悩み事を人に話すとちょっと楽になるって、本当だったんだなぁ。

ハギーは何も言わずに頷くだけだったけど、
それでもとっても救われた。


「……というわけなんだ。」

「…つまり恋人っぽくなりたいの?」

「う…うーん…でもね、もう違うかもって思い始めてるの。」

「…どういう意味?」

「きっとがっくんには、加納さんみたいな…女の子の方が似合ってる気がするんだ。」

「………。」

「わざわざ遠回りして、友達としか思えない私を意識してもらうよりもさ、
 その方が私にとってもがっくんにとっても楽な気がするし…。」

「…本当いつまでたっても馬鹿だね、は。」


呆れ顔でティーカップに口をつけるハギー。
あっさりと私の相談を「バカ」の一言で片づけてしまうその潔さが今は気持ちいい。
こんなちっぽけな事で悩んでる自分がバカなんだなって思えるから。


「っていうか、はベタベタいちゃいちゃしてくる向日が好きなの?」

「…えー…それは何か…怖いな。

「でしょ。結局、バカみたいにはしゃいでるのが2人には1番合ってるんだから。」

「…でも、がっくんはもっと女の子として見れる子といちゃいちゃしたいかも…。」

「だからそれがバカだって言ってんの。そんな風に思ってるなら、となんかとっくに別れてるよ。」

「………。」

「俺には全くもって、恐らく一生理解できないような気持ちだけど、そんなが気に入ってるから付き合ってるんでしょ。」

「…ひしひしと伝わってくるよ、ハギーの気持ちが…っく…!」

「取り合えず、馬鹿なことで悩む前に話してみれば?1人で考えるとはどんどんおかしな方向に進むから。」

「……ありがと、ハギー。ちょっと楽になった。」

「そ。じゃ、そろそろ帰るね。」

「うん!チーズケーキありがとう!また遊びに来てね。」



玄関までハギーを見送り、ドアを閉めようとしたところで
聞きなれた声が聞こえた。

思わずドアをもう一度開くと、そこにはハギーと立ち話をするがっくんが。
…あれ、今日約束してたかな?

ちらりとこちらを見たハギー。
何か言いたいのかと思って声をかけようとすると、フイと顔を逸らし
エレベーターへと歩いて行った。

その代わりにこちらへズンズン向かってきたがっくん。
ドアを閉めるわけにも行かず、取り合えず笑って挨拶をすると
無言でドアをひっつかみ玄関へと足を踏み入れた。


「がっくん、ごめん。今日約束してたっけ?」

「…別に。っていうか約束してなくてもだって勝手に俺の家来るだろ。」

「ま、まぁ確かに…。いや、来てくれて嬉しいよ…入って入って。」

「………滝と約束してたのかよ。」

「あ、違うの。近くに寄ったからたまたま来てくれたんだって。」

「…ふーん。」


雑に靴を脱ぎ捨てるがっくん。
先程のハギーと比べると、余りにもがっくんらしくてつい笑ってしまう。
そんなことには気づかずずんずんといつものように部屋へ入っていくがっくん。

……昨日の今日だし、少し気まずいけど大丈夫。
ハギーにもらった言葉で少し大人になれた気がする。

































「がっくん、チーズケーキ食べる?」

「食べる。」

「ふふ。ハギーが買ってきてくれたんだー。2人だと食べきれなくて半分のこ「は?」

「……ん?」

「なに、2人でチーズケーキ食ってたのかよ。家で。」

「うん。この前、雑誌見てる時にここのチーズケーキ食べたいって言ってたの覚えててくれたみたいでさ。」

「…って、滝とは妙に仲良いよな。」

「そうかな?まぁ、確かにハギーは母っぽいもんなぁ…ハギーはウザがってるみたいだけどね…。」



お皿に盛りつけ直したチーズケーキを持っていくと
いつもならキラキラした顔で迎えてくれるはずのがっくんが
今日はムスっとしていた。あれ、チーズケーキ大好きだったはずなのにな。



「どしたの、がっくん。食べよっか。」

「やっぱいらね。」

「えええ!なんで、美味しいよ?有名なとこのチーズケーキでさ…」

「…何で滝がその有名なとこのチーズケーキをわざわざ買って来る訳?」

「へ?…たまたま寄ったんじゃないの?」

「……っていうか、彼氏いる奴の家に普通にあがるとかおかしいだろ。」

「……………。」

「……何だよ。」

「いや……、まさかがっくんの口から僕はの彼氏なんだぞっ発言が出るとは…」

「んなこと言ってねぇし!あー、もー、ウザ!」


わしゃわしゃっと髪をかき乱し、何か諦めたのか
フォークを持つとむしゃむしゃとチーズケーキを食べ始めた。
その食べっぷりがやっぱり可愛くて、
出来ればずっとこの姿を独り占めしたいな、なんて思う。

ハギーが言ってたようにきっとがっくんは、恋人っぽいなんて思えなくても
例え女に見えなくても、それでも私を選んでくれたんだ。
ごちゃごちゃ考えるのはやめよう。

例えどんな関係でも、がっくんと一緒にいれるだけで幸せだ。


「…フフ、美味しいでしょ?」

「……まぁまぁな。ってか昨日のは何だよ。」

「昨日?」

「勝手に帰っただろ。あの後、俺が片づけたんだからな!」

「ご、ごめんごめん!ちょっとお腹痛くて…ね。」

「……その前に変なこと言ってたじゃん。」

「変なこと?」

「だーかーらー……。恋人っぽくないとかどうとか。」


改めて言われると恥ずかしい。

よく考えると、ある意味あの発言は「もっと恋人みたいなことしたい!」ということで…
盛りのついた女みたいな発言だったよ…ね…!

真っ赤になる顔を抑えて、必死に言い訳を考える。



「いやっ!アレは、その、違うの!忘れて!」

「………ふーん。」

「うん…ちょっと気が動転して…大丈夫、もう落ち着いたから。
 ハギーと話して、如何に自分が馬鹿だったかわかったよ…。」

「何でそこで滝が出てくんだよ。」

「ちょっと悩み相談しててね…、うん。取り合えず昨日はごめんなさい。」

「…………。」

「あ、がっくんの好きなゲームやろっか?お詫びに徹夜で付き合うからさ!」


恥ずかしい気持ちを紛らわせるために、そそくさとゲームの準備を始めようとすると
がっくんに服の裾を思いっきり引っ張られた。
バランスを崩して尻もちをついた私を見下すがっくんの目は冷たい。


「い…痛い…。どうしたの、ゲームやだった?」

「無神経。」

「え?」

「バカ。浮気者。なんか嫌いだ。」

「な、なんでがっくん…」

「普通、か、彼氏の前で他の男に悩み相談した話とかしねぇだろ。」

「……えと…」

「そういうところが本当ムカツク。」

「…………ねぇ、がっくん。」

「は?なんだよ。」

「……もしかして、ヤキモチ妬いてるの?」

「ちげぇよ!誰がなんかに!もう、マジでウザイ。」

「…ふふ…えへへ。ねぇ、がっくん。」

「言い訳なんか聞かねぇからな、もうかえ……ってうわ!」



プリプリ怒るがっくんが可愛すぎて。
初めて、自分ががっくんに彼女として認識されていることを感じて
その嬉しさを堪え切れず抱きついてしまった。



「キモイから!やめろって!はなっ、離せよ!ちょ…力強いから!痛いから!」

「えへへー!だって…だってだってがっくん…私のこと大好きなんだねぇ。」

「誰がそんなこと言ったんだよ!妄想やめろよ!もう帰る!はなせ!!」


勢いで私を振り切ったがっくん。
その表情は見えないけれど、耳まで真っ赤なった後姿を見て

やっぱり彼女って良いもんだなぁ、と思いました。