「なぁ、ジロー。冬でイメージする奴って誰?」
「えー、何それ。心理テスト?んー…冬…、あ、がっくん!」
「本当にいいんだな?ちゃんとイメージしたか?」
「だって適当だもーん。で?何なの?」
「な…なんと…ふふっ、その人は…ジローが≪結婚したい奴≫でしたー!きめぇー!」
「うわー、まじか!やめろよ!無理無理、ジローそういう趣味あったのかよ、うわー!」
「ちょっとそれ最初に(異性で)って付け加えないと駄目じゃん!ノーカンでしょ、ノーカン!」
「あ、忘れてた。」
「なんだよ、つまんねぇな。」
部活後の部室にて、テーブルに集まって談笑する幼馴染3人組。
現在話題に上っているのは、向日が買ったファッション雑誌の特集ページに掲載されている
「あの人の本当の気持ちがわかる?ドキドキ☆心理テスト」のコーナーだった。
嬉々として心理テストを読み上げる宍戸の後ろでは、興味深そうに雑誌を覗きこむ向日。
机の上でうな垂れているジローはテスト結果に不服を申し立てている。
着替えを終えた面々も、3人の騒がしい声に導かれるように
部室中央へと集まり始めた。
「他にもあるぜ。これとか面白そうじゃね?≪異性のイメージを色に当てはめてみよう☆≫とか。」
「でも、これ5色分選ぶんでしょ?そんなに異性いっぱい知らないC〜。」
「あ、じゃあ跡部とか出来るんじゃね?」
「…面倒だ、パス。」
「…あ!じゃあ、ちゃんにやらせるのは?」
「に?…あぁ、俺達の名前入れてもらうってことか?」
宍戸が問いかけると、元気よく頷くジロー。
いつもより目をキラキラとさせているジローを見て、
向日や忍足も賛成の声をあげる。
「なんや、おもろそうやん。色は5色なんやな?」
「おう、ばっちりじゃね?丁度3年レギュラーの人数だし。」
「おっし!じゃあ結果は俺だけが知ってる秘密ということで!へっへ、楽しみだなー。」
宍戸から取りあげた雑誌を顔に近づけ、ニヤニヤする向日。
えー、俺達も知りたいー等と反発する声が聞こえてきたその時。
バタン
「あああああ!もう、ま…っじで今日という今日は怒った!」
「お、ええとこに来たな。」
「ちょっと聞いてよ!あの例のドS水道なんだけど、今日もまたいきなり水から熱湯に変わったのよ!」
ほら、見て!
私の白魚のような手が真っ赤になってる!
と、これみよがしに手の甲を皆に見せつけてみたけど
誰もこちらを向いていなくて。
なんか、いつもはサッサと帰ってるようなメンバーまで居残りして
机にノートやらペンやらひろげてるのですが、何なのかしら。
「ねぇ、この際跡部が水道管工事依頼とか出してくれない?」
このままじゃどんどん私の乙女ポイントが削られていって
しまいには親父みたいな分厚い皮膚の手になっちゃうよ、
と手をさすりながら言うと
「!そんな無駄話してないで、ここ座れ!」
「ちょ…がっくん、無駄話ってどういうこと!?可憐な女子生徒が学校をより良くしようと訴えてるんだよ?」
「おい、さっきからちょこちょこと殴りたくなる修飾語挟んでんじゃねぇぞ。」
「げ…言論統制だ…!この独裁者…!!」
腕を組んでソファに座る跡部に盛大に侮辱されたところで、
私はもうこの議論は無駄だと悟りました。
テニス部に入ってから、諦めが早くなった気がする。こんな青春ってありですか。
がっくんが早く早く!と急かすのが可愛いので許すけど。
指定された椅子に座ると、がっくん以外のメンバーも全員が机にサっと集合した。
「な…何?」
「へへー、今からちゃんに心理テストをしてもらいまーす!」
「ええか、直感で答えるんやで?」
「あ…あんた達中学生にもなってそんな可愛らしいことして遊んでるわけ?」
「いいから、いいから!じゃ、いくぞー!」