赤 … がっくん


「これはもう絶対がっくんでしょ。」

「それ絶対髪の毛の色じゃーん、ちゃん。」

「違うの、もちろんそれもあるかもしれないけど、がっくんをイメージすると…赤しか出てこない。」

「……、まだ考える時間あるぜ?」

「へ?いや、だってハートのイメージって赤じゃん?ラブリー=赤じゃん?つまり赤=がっくんなんだよ!」

「わけわからんわ。ほんで?結果は?」

「…いや、ちょっと待て。もうちょっと待ってやろうぜ。」


やけに結果を言い渋るがっくんに不審な目を向ける皆。
どことなく目が泳いでいるけど…なんだ?


「別にどれだけ考えたってがっくんのイメージは赤だよ!」

「待てって言ってんだろ!もっと違う色にしろよ!

「何なの、赤の髪の毛のくせして赤が嫌いなの?」

「ちげぇよ、この結果がイヤなの!!」

「だから、結果を先に言えっつってんだろうが。」


プリプリ怒るがっくんの手から雑誌を奪い取った跡部。
あ、やめろ!と、すぐにがっくんが奪い返したけど
時すでに遅し。結果をバッチリ見た様子の跡部は、1人で声を殺して笑い始めた。

なんだなんだ。気になるじゃないのよ。

教えなさいよ、と詰め寄ってみても
跡部はお腹を押さえてしゃがんでいる。こ、こんなに笑う跡部珍しいな。

跡部は私達に「待ってくれ」という合図のように掌を差し出して
必死に笑いを納めているようだった。


「…っく…ふう…。ごほっ。……言うぞ。」

「お、おう。」

「は、早く言ってよ…。」

「向日はの……
















 一番好きな人だと。」





含み笑いでそう言う跡部に続いて、
ゲラゲラと笑い始める宍戸にジロちゃん。
忍足に至っては机をバシバシ叩いて笑ってる。



「いや…いや、ちょっと待て!何が面白いのよ!」

「だっておもろいやん、見てみぃや岳人の顔。」


私ががっくんを好きなのなんて周知の事実でしょうが!
と思っていたのだけれど、後ろを振り向いた時に見たがっくんの顔は
思いっきりふてくされていた。…なんでやねん…!!


「ちょ…何そのブスっとした顔は!」

「…のせいで皆にバカにされてんだぞ!」

「なんでよ!私ががっくんのこと好きだと駄目なの!?」

「駄目に決まってんだろ!なんで男同士で「何の話してんのよ!」


な…なんで好意を伝えただけでこんなに怒られなきゃなんないの…!
っていうかこの心理テストの性質的にこういう答えは予想できたんじゃないの?

相手が、自分のことが1番好きだなんてわかったら喜ぶもんでしょうが!
なのになんでそんな不機嫌なんだ!
しかも、思い返してみると必死に私の答えを回避しようとしてなかったか?この野郎…!!




「っていうかこの心理テスト間違ってるよ。私の1番好きな人はがっくんじゃないもん。」

「…じゃあ誰だって言うんだよ。」


先程までムスっとしてたがっくんが、少し顔をあげた。


「ぴよちゃんさまにちょたに樺地。少なくともこの3人が1番のお気に入りかなぁ。」

「おい、やめてやれ。あいつらが学校来なくなったらどうすんだよ。」

「そんな心を病むようなレベルの発言じゃないでしょ!本当失礼だな、あんた達!」

「えー、じゃあがっくんは?」


無邪気な笑顔で問いかけるジロちゃんに、少し考える。
うーん…何かさっきのがっくんの態度はムカツクし、だいぶ好感度下がったな…。


「……榊先生の次…ぐらいかな。」

「ふざけんなよ!!なんで監督なんかより下なんだよ!馬鹿!」

「安心して、忍足と跡部はそのさらに下だよ!」

「さりげなくムカツクわ、こいつ。」

「っは、なんか俺様の中のランキングだと塩昆布の次ぐらいだ。

「跡部、塩昆布めっちゃ苦手じゃん。」

「っく…!減らず口を…!」


ピーチクパーチクと私に不服を訴える奴等に
もう知るかと無視してやると、急に頬に衝撃がはしった。



「ひゃ…っひゃひ!?」

「なーんで俺が監督より下なんだよ。」



目の前には私の頬を思いっきり左右に広げるがっくん。
不機嫌そうながっくんは手加減を知らない。


「ひゃ、ひゃへへほ!」

「俺が1番だろ?」


あぁああ痛い痛い痛い!いい加減にしろ!
怒りたい気持ちも萎える程の痛みに、つい頷いてしまう。

するとニパっと顔を綻ばせた氷帝の小悪魔。

さっきまで引き延ばしていた私の頬をパチンと離し、
何故か満足気に頷いている。


「いっ…ちょっとイタイじゃない、がっくん!」

が侮辱するようなこと言うからだろ、バーカ。」

「っく…結局がっくんだって私のこと好きなんじゃん…。」

「はぁ!?ふざけんなよ!」

「もう何なのよ!好かれたいのか嫌われたいのかどっちなんだ!」



あまりにも心の移り変わりが激しすぎるがっくんにもうついてけない。
結局どうしたいんだ、この反抗期男子め…!


に好かれんのは嫌だけど、が他の奴を甘やかしてるともっと嫌。」


腕を組んではっきりとそういうがっくんに、みんな目が点になる。

…な、何を言ってるんだこの子は…。


「……それって独占欲ちゃうん?」

「ちげぇよ、変な言い方すんなよ。」

「ぶー、ちゃんは俺も甘やかしてくれるもーん。」

「バカ、俺のこと1番甘やかしてるに決まってんだろ。」


睨みあうがっくんにジロちゃんを見て、やっぱりがっくんは私のことが好きだなぁと強制解釈した。
それを見てがっくんは嫌そうな顔をしたけど、思春期特有のプチ反抗だと思いたい。

だって…だってそうじゃないと余りにも私が可哀想じゃないですか…。