黄 … ジロちゃん



「ジロちゃんだよ。」

「あ、ついに俺の番ー?何なに、ちゃんにどう思われてるの〜?」

「ふっ…ふふ…マジでナイスタイミング…!発表します!ジローは…













 子供にしたいタイプの人!」





「ぎゃははは!ばっちりじゃん!忍足との子供がジロー!うわぁ、悲惨な家族だぜ!

「…ちょっと、なんで俺が子供で忍足が旦那なの?」

「何が不服なんだよ、ジロー。」

「俺が旦那で忍足が子供でいいじゃん!」



一瞬、みんな想像したのか空気が止まった。



「い…いやいや…いやだよ!こんな子供!可愛くないどころか憎しみすら湧きそうだわ!

「俺が子供なんてヤーダー!ちゃんとイチャつく忍足なんて見たくないもん!」

「俺も嫌やわ、勘弁してや。とイチャつくてそれどう考えても罰ゲームやん。

「とにかく、忍足が私達家族に含まれてるのが問題の発端なのよ。出て行きなさいよ!」

「何の話しとんねん、こっちかて三つ指ついてお断りじゃ!」

「いいもんいいもん!私はシングルマザーとしてジロちゃんと逞しく生きていくんだから!」

「だから、俺は子供じゃないのー!ちゃんの旦那になるのー!」

「うんうん、そうだねー。私と結婚しようね、ジロちゃーん。」

「アホちゃうか。ジローなんかと結婚したらどうなるか想像もできへんのか。」


冷めた目で言い放つ忍足。
……フと、冷静になって考えてみる。ジロちゃんが旦那の生活。


朝起こしても起こしても起こしても…起きないだろうなぁ。
そして働かないだろうなぁ…。だってジロちゃんがこのストレス社会に適合できるとは考えにくい。
あ、でもお父さんのお店があるじゃない!そこを継げばいいんだ!
……だけどちょっと待って。私が嫁の立場だとしたら、絶対ジロちゃんを甘やかしてしまう。

仕事の時間になっても起きないジロちゃんに代わって店番をし、
疲れ果てて帰ってきてみればジロちゃんがお腹空いたと駄々をこね、
そして私は一生ジロちゃんを甘やかし続け、どんどんダメな夫に…



「だ…駄目!やっぱり私にジロちゃんの妻は務まらない!」

「えー、なんでなんで!」

「なんかわかるわ。、絶対ジローのこと甘やかしまくるもんな。」

「っく…仕方ない…!でも大丈夫!ジロちゃんが子供なら問題ないよ!私が甘やかして忍足が怒ればいいんだから!」

ナチュラルに夫婦設定にすんのやめろや。

「ちょっと。ジロちゃんを立派に育てようって気はないわけ?」

「ジローが子供って苦労多すぎやろ。せやな、せめて日吉が子供なんやったら考えたってもええけど。」

「それは絶対駄目。」

「なんでだよ。、日吉大好きじゃん。」

「だってぴよちゃんさまが子供だと私と禁断の恋になっちゃうじゃん!!」



ぴよちゃんさまと血がつながってるだなんて、ヤダヤダ!
私はぴよちゃんさまと甘酸っぱい恋とかしたいんだ…

などとグルグル考えていると、まわりの冷めた目線の中に1つ
怒りを含んだ視線が混じっていることに気付いた。



「…ちゃん、それ俺は別に恋愛対象じゃなくてもいいってこと?」

「ジ、ジロちゃん…いや…も、もちろんジロちゃんもその…。」


しまった、何だかジロちゃんを怒らせる結果になってしまった。
笑ってない目でズンズンと近寄ってくるジロちゃんに
上手く言い訳できないままでいると、面倒くさそうに頬杖をついたがっくんが口を開いた。



「ジローは、男って感じじゃねぇもんなー。」

「確かに。とジローが付き合ってるとか想像できねぇし。」

「俺だって男だもん!」



そう言って、椅子に座る私に真正面からギュっと抱きつくジロちゃんは
やっぱり男の子というよりは、本当に子供みたい。こんな可愛い子供が欲しいなぁ、
なんてニヤニヤしながら、ジロちゃんの頭をポンポンと撫でてやる。

すると、それが気に食わなかったのかジロちゃんは抱きついたまま私の顔を真正面から捉え

何を思ったのか







チュッ











「……う、うげー何やってんのお前ジロー…。」

「なっ…なに…なにしっ…ジロちゃん!!!」

「えへへー、大好きのチュー。」

「……なんか嫌なもん見せられたわー。」



ニヘヘっと笑いながら私を見つめるジロちゃん。
ふいうちのほっぺにチューで、びっくりした私は放心状態。




「俺だって男なんだからね。」




ずいっと顔を近づけ、真面目なトーンでこんなこと言われたら…

怒ればいいのか喜べばいいのかどうしていいのかわからなくて
ニヤける私に、四方八方から罵声が飛んだ。


とりあえず、ジロちゃんの男の子モードは相変わらず破壊力が強すぎて
私の心臓が持たないので、程々にしてほしいなと思いました。