「早速やってまいりました、さてここはどこでしょうか?」
「まずはみなさん、学園祭の準備をしなきゃ!ということで…
ここは学園祭受付、そして学園祭グッズ売り場です!」
「学園祭を楽しむためには、まず金券!そしてこの氷帝学園オリジナルグッズです。」
「お、早速色々と購入している人たちがいますね。インタビューしてみましょう。」
「「こんにちはー!」」
「ん?なんだよ、これ。テレビ?」
「今、校舎内に放送されている特別番組なんです!あなた達は一般のお客様ですよね?」
「うん、友達に会いにきたんだ。」
「ね、ねぇ日吉…。これ…間違いなく幸村部長だよね?」
「………丸井さんに仁王さんに…。」
「ジャッカル先輩に切原も!な、なんで?」
「……幸村部長の言う友達って…誰だ?」
「わかんない…跡部さんかな?」
「……いや、わかった。」
「え?何?」
「先輩だ。」
「……先輩!?」
「…あの幸村さんが会いに来る友達って、先輩ぐらいしかいないだろ。」
「った…確かに…。」
「仁王先輩仁王先輩!これ、このリストバンド結構よさげじゃないッスか?」
「俺はこっちのタオルがよか。」
「…あの、率直な意見で申し訳ないのですが…みなさんめちゃくちゃカッコイイですね!」
目をハートにした副部長の末本さんが丸井先輩にマイクを向ける。
…確かに、このメンバーが揃うと絵的にすごいことになってる気がする…!
その丸井先輩を押しのけて、後ろから飛び出してきた切原が画面いっぱいに映った。
「へへ、そうッスか?おーい!さん見てますー?」
「さん?さんって…もしかして氷帝3年の…?」
「そうだよ。テニス部マネージャーのね。」
何故かドヤ顔で答える幸村部長。
はっきりと聞こえた先輩の名前。
……やっぱり会いに来たんだ。
「…これ、先輩が見てたらすごいことになりそうだね。」
「……というか、コメント大丈夫か?」
「え?何?」
「呟き見てみろよ。ほとんどが先輩の目撃情報になってるぞ。」
"さんなら今廊下走ってた!@ななな"
"みんなめちゃくちゃカッコイイ!なのになんでさん?@滝君に罵られ隊"
"ちゃん、さっきも可愛い男の子達と歩いてた!@ねこにゃん"
"また!許さない!!@跡部様親衛隊No.4"
「……う、うわぁ…。そりゃこうなるよね。」
「…本当に学園中丸見えだな、これ。」
「あ!あなたは学園祭タオルを買ったんですね。」
「おう。結構この大きさって貴重だしな。」
「ちょっとこちらへ…!わぁ、どうですか皆さん!スラっと綺麗なスタイルによくお似合いですよね!」
いつの間にか、放送部の二人にカメラの真ん中へと引っ張り出されていたジャッカル先輩。
首からかけたピンクのタオルが爽やかだ。
まるでモデルを映すかのように、ローアングルでつま先から頭の上までをバッチリ捉えるカメラ。
呟き欄には「私もあのタオル欲しい!」や「素敵!」の文字が並んでいた。
…これはタオルの売り上げが伸びそうだ。
そんなことは俺だけじゃなくて、もちろん放送部の二人も考えていたようで
立海のみなさんのルックスをフル活用して、商品の紹介をしていた。
「皆さん、おそろいのリストバンド購入してるじゃないですか!」
「おう。このオレンジが立海カラーだからな、似合ってんだろぃ?」
そう言って、リストバンドをカメラに向けながら
パチンとウインクをした丸井先輩。その瞬間に、おびただしい程の熱烈なメッセージが流れた。
「う…うわぁ、今のカッコよかったねぇ…。」
「…また売り上げが伸びるな。」
氷帝学園祭の番組だったはずが、あっという間に立海ボーイズコレクションになってしまった。
リストバンドだけならまだしも、最終的には幸村部長が氷帝のパンフレットをただ持って立ってるだけの映像や
仁王先輩が金券を見つめるだけの映像が映し出されていた。
放送部の商魂が見え隠れしている。…でも、この映像もきっと女性にはたまらないんだろうなぁ。
「…こんなカッコイイ人たちがみんな先輩に会いに来たのかぁ。」
「……だったらなんだよ。」
「……うーん、何かわからないけど…モヤっとする…。」
「先輩の調子に乗った顔を想像するとイラつくのはわかる。」
「先輩喜ぶんだろうねー……。」
俺達は部室の冷蔵庫から取り出したジュースを飲みながら、
ただただ華やかなテレビ画面を見つめていた。