「さぁ、さぁ。今までは模擬店を中心に紹介してきましたが、次はちょーっと趣向を変えてみましょう!」
「女子の皆様お待たせしました!学園祭イケメンウォッチャーのコーナーです!」
パフパフと安っぽいラッパが鳴ると、末本さんが大きなサングラスをかけた。
そして映し出されたのは、中庭。まだまだ学園祭は盛り上がっているようで
たくさんの人が行き交っていた。
「それでは、部長!早速校内のイケメン探しの旅に出ましょう!」
「末本が視聴率の為にと無理矢理ねじ込んだこの企画ですが、どうなるのでしょうか。」
「あああああ!」
「なんだ!?」
「み…みて下さい…あんなところに…イケメンが…4人も!」
「早速向かいましょう!」
「こんにちはー!インタビューさせてもらってもいいですか?」
「へ?なんやー?これテレビか?」
「…学園祭にテレビが入ってるとか、普通ちゃうわ。」
「さすがやなー、氷帝!」
末本さんが走って行った先にいた4人組は、
これまたよく見知った顔だった。
「…うわ、謙也達やん。」
「……うっうわああああああ!バカ、あいつら…!」
「…ねぇ、何あの…フフッ、何あの服!」
「ん?…ところで、皆さんおそろいで着ているその服…!」
「あぁ、これな。がっくんTシャツや。」
爽やかな笑顔でそう語る白石を見て、
隣に座っていた向日は一目散に部室を飛び出していった。顔を真っ赤にして。
「…もう今更行っても、皆に見られちゃってるけどね。」
「岳人はそういうの考えられへん子やからな。」
「もしかしてHYTのライブ帰りですか?」
「せや!俺らめっちゃ声出して盛り上げ立ったからな!」
「…無理矢理やらされてたようなもんスわ。」
「へぇ!それはそれは…そうだ!もし良かったらここで見せてもらえませんか?」
「ええでー!に教えてもろてん!皆、いっくでー!」
「「「「超っ絶っカワイイ!がっく「やめろおおおおおお!」
さすが関西というかなんというか、ノリの良すぎる4人が
中庭で大声で叫ぼうとしたその時。全速力で走ってくる向日が画面に入ってきた。
…何かおもしろい展開かも。
「おお!がっくんやないか。」
「このTシャツ着てたら、校内色んなところでオマケしてもらえたり声かけてもらえたりしてなぁ。」
「がっくんはやっぱりアイドルなんやな!」
「…これ、後でネットで売ってもええスか?」
「バカ!今すぐ脱げよ!恥ずかしい!」
あのTシャツを着て校内を歩けって言われたら、
フルフェイスのヘルメットぐらいかぶってないとキツいと思うけど、
この4人は案外ノリノリで楽しんでいるようだった。
呟きにも、そのTシャツ欲しい!なんてコメントが溢れていて盛り上がっているようだ。
しかし、当の本人だけが顔を真っ赤にして抵抗している。
1番小さな1年ルーキーのTシャツを脱がしにかかったところで
ギャラリーから黄色いようなピンクなような、そんな悲鳴が上がった。
「早く脱・げ・って言ってんだろ!」
「いややー、にもろたんやー!」
「うわー、がっくん変態やん!男のTシャツ脱がそうとするなんて!」
ケラケラと笑いながら、忍足の従兄弟が発言すると
向日が一瞬止まり、ポンッという言葉が聞こえてきそうな程顔を真っ赤にした。
「なっ、なっ…何言ってんだよ!」
「向日さんてそういう趣味あったんや、ブログに書こ。」
「ふざけんじゃねー!」
「そっそれでは現場が混乱してまいりましたので一旦中継地点をうつしまーす!」
タイトル画面に切り替わると、忍足と自然と顔を見合わせた。
……何か上手く言い表せないけど、
テニス部って馬鹿ばっかりなのかな。