「…なんだかんだで、2日目もあと少しで終わるね。」
「ほんまやなぁ。もうこんな時間か…。」
「放送部の特別番組もあとちょっとってところか……ん?」
次の中継地点に移動してるはずの放送部。
だけど、タイトル画面がフっと切り替わり
校舎内の廊下が映し出された。
カメラの操作ミスか何かかと思って見守っていると
画面の左から、人が出てきた。
「リョ、リョーマ君、今日は学園祭楽しいねぇ!」
「楽しい。」
「は!?これ…と越前じゃん。」
「…越前まで来てるんかいな…。」
「…っていうか、何この下手な芝居。」
急に流れ始めた映像に、他の皆も戸惑っているみたいで
呟き欄には「?」の文字が飛び交っていた。
「ほら!次はお好み焼き屋さんに行ってみようよ!急ごう!」
「…待って…ああー」
バタリ
「ま、まぁ大変!大丈夫?」
「うえーん、うえーん。痛いよー。」
「ぶふぉぅっ!……い、痛いの?本当に痛いの?」
「…今、普通に吹き出してたよね。」
「笑ってもうてたな。…それにしても越前はイヤイヤやらされてんのか?」
「……棒演技とかいうレベルじゃねぇな。」
「痛いって言ってるでしょ。」
「説得力が皆無!…あ、ど、どうしようー!全然泣き止まないわ、この弟ー!」
「………これを。」
画面の右側からぬっと現れたのは、俺たちの後輩だった。
まさかの樺地の登場に、3人とも言葉を失い
ただただ画面を見つめるだけだった。
「あ、ありがとうございます!」
「…………。」
「待ってください!このボトルシップって…校舎3Fの美術室の教室で
作ることの出来るボトルシップですよね!?そしてあなたはその教室で
ボトルシップ工作の先生として働いている樺地さん!寡黙で有名なあなただから
事前に派手な宣伝は出来なかったけど、徹夜でボトルシップキットを作成して
たくさんの子供達や遊びに来た人に楽しんでもらいたいって言ってましたよね…!
え!?なんですって!?しかもこの…この可愛いボトルシップが無料で作れるんですか!?
大変…急がないと!急がないとあっという間になくなってしまうわ!いくわよ、リョーマ!」
「わかったよ、おねえちゃん。」
プツッ
「…なんや今のわざとらしい説明。」
そのまま途切れた画面は、しばらくするとまたタイトル画像へと切り替わった。
謎の映像に、皆からのコメントは炎上に近い状態になっていた。
"…ボトルシップ教室やってるってこと?@ましょー"
"えー、あれ作れるんだったら行ってみたい!@東京都民"
"っていうか、今の男の子めちゃくちゃ可愛かった…@サッカー部親衛隊"
次々に飛び交うメッセージを見ていると、内容はどうあれ
樺地の工作教室への反応は上々のようだった。
「樺地がそんなことやってたなんてなぁ、知らんかったわ。」
「ボトルシップが趣味だって言ってたもんね。いいなぁ、あれ後で樺地に1つもらえないかな。」
「あ、っていうか次の放送まで結構時間空くじゃん。折角だし樺地のとこ行ってみるか。」
「ええな。遊びに行ったろ。」
「…本当、なんだかんだ言って皆後輩には優しいよね。」
「……来年はもうこうやって一緒に学園祭は出来へんからな。」
「だよなー…。今年の内に思う存分楽しんどかねぇとさ!」
「…フフ、そうだね。俺も行くよ。」
向かった樺地の工作教室は、既にチビッ子達で溢れていた。
樺地があまりにも嬉しそうな顔をしてるもんだから、
こっそり写真を撮ってに送っておいてあげた。